…… ページ30
**
今年もまた平凡な日々を重ねただけの1年が終わってしまう
俺たちにはドラマティックな出来事なんてナンも起こんなかったよな
身体が震えるほどの喜びも胸が張り裂けるほどの悲しみも
そんな大層なものは全然なかった
大体､そんなことそうそう起こるもんじゃないよな
小説やTVドラマじゃあるまいし……
生きていくってそんなキラキラしたもんじゃない
そんなこと
歳を重ねるにつれ分かってきたつもりだ
だけど…
こんな面白くもない平凡な毎日を
なんてことない俺との日々を
ひかるはいったいどう思っているのだろう
後悔…とか、してないかい？
ひかる
おまえは今、しあわせか？…
** **
晩メシの片付けを手伝って
と言っても食器や箸を流しに運んでテーブルを拭いただけなんだけど
俺は湯呑みを手にソファーへ移動した
ひかるはというと、
鍋や食器を洗い終えたと思ったら
そのまま玄関ドアを開け放ちほうきを持って掃除を始めた
ひかるがドアが開けた途端
冷え切った外の空気が見えない川のように部屋のなかに流れ込んで来た
大晦日におこなわれる玄関の掃き清めーー
ひかるにとってこれは大切な年末行事なのだ
今はもう慣れたけれど初めての年は俺もビックリして
「ナニやってんの？」って
玄関に駆けつけて尋ねたものだ
「歳神様に失礼のないように掃き清めているんだよ」
ひかるはえらく真面目な顔をしてそう答えたっけ
聞けば、ひかるは子どもの頃
お婆ちゃんに教わって以来毎年欠かさずやっているらしい
故郷を離れて10年以上経つというのに
いまだにそんなことを守っているなんて
そういうところ生真面目すぎるひかるらしくて
ちょっと笑える
*
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 83人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：べす | 作成日時：2022年7月12日 20時
