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□粉雪の降る夜は□ ページ29
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□□リーマンyb × hk□□
「できたぞ」
ぶっきらぼうなひかるの声にフッと意識が戻った
知らぬ間にソファーでうとうとしてたらしい
伸びをしながら起き上がれば、
部屋いっぱいに旨そうな匂いが広がっている
テーブルには白い湯気をあげた蕎麦がふたつ
今日は大みそか
立派なえび天がデデンとのった年越し蕎麦だ
「うまそうだな」
さっそく椅子に座るとひかるはえび天がちょっとばかり大きいほうを
当たり前のように俺の前に置いた
「○○庵のそばにした」
ひかるは七味唐辛子を振り入れながら
素っ気なく言った
知ってるよ…
ある年､俺がここのうまいなって言ってから
おまえは毎年この蕎麦を用意してくれているだろ？
「やっぱ、ここのうまいな」
「そうだな」
こうやってひかるとふたりで年を越すのは
何回目になるのだろう?
ひかるはきっと覚えているのだろうが
俺はちょっとあやふやですぐには出てこない
だけど、結構長いよな、俺たち…、
その分、最近は会話も減ってきた気がする
淋しいけど…
仕方がないけど…
TVから流れるお祭り騒ぎのような歌番組と
ふたりの蕎麦をすする音が小さな部屋に広がる
*
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作者名：べす | 作成日時：2022年7月12日 20時
