やぶとひかると恋ほたる (ページ23)

今日:9 hit、昨日:4 hit、合計:14,841 hit

…… ページ23

＊＊

帰りの車内で何があったのかまではわかんないけれど
絶対何かがあったんだなって顔で皆がうんうんうなづいてる

おまえらさすがだ
察しがいいな…、けどな

オイ､そこのふたり､ニヤつき過ぎた
あとそこらへん､やっとかよ…このヘタレって目で俺を見んな

はじめっからこうなるの分かってたから別に驚かないよ…
の雰囲気がちょっとシャクに触るけど
大げさに騒ぎ立てないでいてくれるからホント助かる
さすが自慢のメンバーだ、有難い

「んじゃ､今日はこれで解散ということで、お疲れ」

頃合いを見計らい声をかけるとメンバーたちがそれぞれはけて行った

「ひかる､一緒に帰るか？」
「うん」

これまで何度も呑み込んでいた言葉がヤケにあっさり出て来て
俺自身がいちばん驚いた

ひかると一緒にしたい事が山ほどあるんだ

メシ食いに行こう
飲みにも行こう
あと俺ンちに誘ったら来てくれるかな？
キスしたら怒るかな？

ガキみたいに妄想していたら
突然俺のケツに衝撃が走った

痛ッと振り向けば

「てめー､俺のひかるを泣かせたらブッ殺す」と

いのーがすげ〜目つきで睨んでいる

「うるせーな､分かってるし…てか俺のひかるって…ふざけんな」
「そっちこそ、ばか薮の癖して」
「お前にバカ呼ばわりされる筋合いはない」
「うっせー､バカは黙ってろ」

いつも通りの丁々発止のやり取りを終えると
いのーはとりあえず気が済んだのか
今度はひかるにガバっと抱きついて背中をポンポンしながら

「あんなヘタレのどこがいいの？」なぞとほざいている

「でも､よかったね､ひかる…」ってボリューム下げて言ったのも聞こえたぞ
ったくホントに喰えない奴だ

だけど､それに応えて恥ずかしそうにコクコクうなづくひかるが
超可愛かったからさっきのケツ蹴りは見逃してやる

「オイ､高木を待たせていいのか？」

いつまでもひかるに抱きついているいのーを蹴散らそうと声をかけると

「いーの､たかきは俺にメロメロだし､お前と違って優しいの」

いのーは謎の彼氏自慢をして高木のもとに帰っていった
やれやれだ

深夜の駐車場でふたりきり
お月さんは相変わらず空から俺たちを眺めている

ひかるに手を差し出すとひかるはぎゅっと握ってくれた
俺もぎゅっと握り返す

繋いだ手と手
あったけぇなぁーー

この温もりを俺はゼッテー忘れない

＊＊Fin＊＊