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…… ページ20

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いつもだったら「ふざけんな」ってたたき起こしたかもしれない

だけど

月明かりに照らされたやぶの顔を見ていたら
手のひらに落ちた粉雪が静かに解けていくように
おれの体からも余計な力がすうっと抜けていった
傷つくことを恐れて厳重に張りめぐらせていた心の壁まで
消えてしまった気がする


やぶに膝枕ーー

この状況はすごく恥ずかしいんだけど…、
それよりも
体温とか頭の重さとかやぶをじかに感じられるこのしあわせに
自分でも意味わかんないくらい心がぬくぬくしてくる


顔つきがちょっと男らしくなってきてるなぁとか
相変わらずまつ毛が密集しててかわいいなとか
最近おまえの声大人っぽくなってツヤが出て来てるぞとか


色んな思いが次から次に込み上げてきて
心がやぶでいっぱいになって
それさえもうれしくて

“愛おしい“ってこんな気持ちのことかなぁって思ったりして…


気がつけばおれの手は勝手に動き出し
驚くほど自然にやぶの髪を撫ではじめていた


やぶの髪の毛はおれのよりちょっと硬めの感触だ
触れてるうちにまだ子どもだった時のことを思い出した

あの頃やぶは頭を触られるのが大嫌いでみんなには絶対触らせないのに
ひかるは特別だからいいよっておれがわしゃわしゃしても怒んなかったよね
あれ、ちょっとうれしかった
懐かしいな

ねぇやぶは覚えてる?




しばらくの間おとなしく髪を触らせていたやぶがおもむろにおれの手を掴んだ

“あっごめん、やっぱり嫌だったよね…、今のおれは特別じゃないよね“


慌てて手を引っ込めようとしたら
やぶはおれの手をしっかり掴んで離そうとしない

おれはこの状況にどう対処していいのかまるで分からない

身動きできないでいるとやぶはおれの手を包んだままの両手を
自分の唇に寄せておれの手のひらにキスをした


ビリビリッと甘くて苦い電流がおれの体内を猛スピードで駆け抜けた
馬鹿みたいに心臓が騒ぎ出して
手のひらが燃えるように熱くなって

でもちっともイヤじゃなくて
なんでか涙まで出てきそうになって



このまま時間が止まってくれたらいいのにーー

なんて思うおれは きっと

月に魔法をかけられている





**Fin**

□ 月の雫が落ちた夜 □→←□月に魔法をかけられて□



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作者名:べす | 作成日時:2022年7月12日 20時

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