□ Kiss diary□ ページ13
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□□社会人yb x hk□□
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夏真っ盛りの日曜日
ギラギラ元気だった太陽が名残惜しそうに沈んでいった
オレンジ色だった空もいつの間にか真っ暗だ
待ち人は来ないみたいだし腹も減ってきた
そろそろ晩飯にしようかな
俺は立ちあがると冷蔵庫から鍋を取り出しテーブルの真ん中に置いた
鍋の中身は冷え冷えの冷やしおでん
昨日のうちから仕込んでおいたやつだ
キンと冷えた煮汁をスプーンでひと口
うん、うまい
ホントはやぶに食べさせたかったけれど
あいつ、ここのところめちゃくちゃ忙しそうで
おでんぐらいで疲れたあいつを呼び出すのも気がひける
休養は大事だ
おれなら大丈夫
これくらい我慢できるし…
そんなことを考えながらだしの染みたはんぺんを噛み締めていると
ドン、ドンと遠くで花火を打ち上げる音が聞こえてきた
恒例の花火大会がはじまったらしい
缶ビール片手にベランダに出てみる
分かっていたけどここからじゃ花火のカケラも見えやしない
しばらく真っ黒な夜空を見上げていたら
何故だかふと、やぶの顔が浮かんできた
あいつと付き合いはじめたのは大学2年の夏
あの花火大会がきっかけだった
その関係は社会人になった今でもなんとなく続いている
あれから何年経ったかな?
目を閉じるとコマ切れの映像がまぶたの裏に映し出される
点滅してる青信号とか
やぶに掴まれたままのおれの右手とか
ド○○キしながら見上げたハート形の花火とか
こっそり盗み見たやぶの横顔とか…
何年も前の思い出なんて知らないうちにほつれたり汚れたり
どんどん色褪せていくはずなのに、おれの中の思い出は
今でもバカみたいに鮮明で綺麗なまま保存されている
だけど…、あいつはどうだろう?
あいつにしてみればあの日の出来事なんて
今じゃ大して意味のないガラクタに変わっているのかも知れない
あいつはもうおれのこと飽きてしまったかも…なんて
いつの間にかネガティブなコトを考え出している
*
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作者名:べす | 作成日時:2022年7月12日 20時