好物頂上決戦【月島 蛍】

タルトの味。 ページ20

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「……」

「……」

「おいおい葬式かよ2人とも〜。もっと楽しそうに食べて！仲悪いなら仲良くなる努力をしろ！」

「兄ちゃん。会社だったらこれパワハラだからなマジで」

「何でこんなことに…」






月島が隣でポツリと呟く。本当にそれな。





一緒に食おうぜと兄ちゃんが言った後、私と月島は無理無理、嫌ですと首を横に振った。

普通に持って帰って食べようよ…と上目遣いで兄ちゃんにお願いしたのに。

月島も、『僕ら仲悪いんで…』と言って逃れようとしていたのに。






『ならなおさら一緒に食おうぜ！お兄さん奢ってやるからさ？妹と仲良くしてほしいし！』




兄ちゃんは一周回ってアホだ。本当に社会人？



さらに兄ちゃんの暴走は止まらず、断れず渋々4人で同じテーブルについたのだが、


「お前らは仲良くしなきゃだからこっちな」


そう言って、私と月島を無理矢理隣に座らせたのだった。地獄か。




月島の顔見てよ兄ちゃん。しにそうでしょ。


そう言ってるのに上手く躱される。ちくしょう。








「あ、ごめん電話。ちょっと外すな」

「…うん、」

「ごめん俺もトイレ行ってくる」

「…うん」







もはや本当に葬式だった。

山口くんなんでこのタイミングでトイレ行くの？と思ったけど過ぎたことは仕方ない。



月島と2人、並んで目の前の食べかけのケーキを見つめる。









「…ごめん、うちのバカ兄が」

「…僕、亀野家のDNA無理かもしんない」

「今回ばっかりは何も言えな」

「ただ、」







ちょっと羨ましい。




私は咄嗟に月島の顔を見る。

ハッとした月島は、「何でもない、」とケーキを口に運んだ。





言いたくないことなのかもしれない。

また聞いたらキレるからやめよ、と私もタルトを口に運ぶ。



と、月島がクスリと笑った。









「なに、」

「キミ、クリームついてるの気付いてる？」

「どこ？」

「さあね」







教えてくれない月島は、とことん意地悪。

唇を拭うも、取れた様子はない。




なんで、と呟けば、月島は笑って、






「鈍臭いねキミ、」






すっと指で唇の端を拭って、




それを、舐めた。









「へぇ…意外と美味しい」

「…っ」





ぶわっ、と頬が熱くなる。





今ちょっとだけ、指が、唇に触れ…た。







「…顔赤いけど。何、今度こそ照れた？」

「うるさいドS…」




赤い顔を何とかするので精一杯で、



その後タルトの味なんて、何も分からなかった。

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