人生最期の飯は。 ページ48
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「なあ、離れろや」
「嫌や、お前俺なしじゃ何も出来んくせに」
「何言うてんねん。暑いからホンマ離れて」
「冷たすぎるやろ」
松葉杖を手に取り、歩き出す。
横には、心配そうに付き添う治。
足の捻挫と肩の打撲。全治3週間。
松葉杖と共に言い渡されたのは、辛い現実。
ちなみにあの後、女の子達は侑と、角名が呼び寄せた北さんにこってり絞られ、
バレー部に一切関わらないことが約束された。
破ったらどうなるかは知らない。
そして、もちろん私にも謝りに来てくれた。
絶対嫌々だったと思うけど。
「あ、治、私アンタに謝らんないけんことあんねん」
「なに?」
「…ヘアピン、この前階段から落とされた時に割れてしもた」
パキリ、と音が鳴って床を見た時、絶望しか頭になかった。
また、大切な物がなくなってしまったんだ、と。
「…別にええよ」
「え、でも、」
「また一緒に買いに行けばええやん。今度は正真正銘のデートやな」
バチ、とウインクする治に、侑が憑依してないか心配になる。
それでも私は嬉しくて、ありがとう、と治の袖を握る。
「え〜。そこは手ェ握るとこやろ」
「恥ずかしいねん…部活中やし、」
「何を今更…」
「ちょお!背後から胸触るな!」
「ええやんか」
よくない。私は手をはたき落とした。
付き合ってから油断も隙もない。
甘えていると思ったら突然スイッチが入ったようにオラつくから止めるの大変なんよな…
「なあ、(人1)」
「なに?」
「好きやで、」
本当に突然ぶっ込んでくるからタチが悪い。
心臓が、バクバクと高鳴る。
「私も、」
「私も?」
「好き、大好き…」
「そっかそっか〜」
背後にいた治は満足そうに笑って、
そのまま前に回って、私の口を唐突に塞いだ。
「!?ふ、んんっ、」
「ふは、ええ顔…」
「オイサム、サボって何しとんねん」
「愛を確かめ合っとるんや」
「ハァ?」
治は、私の耳にそっと顔を近づけて、
「ごちそうさん、次は最後まで食べたるから覚悟しいや?」
そう、怪しげに笑った。
「食べても、ええよ」
「言うたな?人生最期の飯もお前やぞ」
「美味しくないと思うで」
「それでも、ええ」
左手をとられ、薬指を撫でられる。
私は、微笑んで指を絡めた。
「人生最期まで、幸せにしてな」
「仰せのままに」
Fin.
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亀さん - 完結おめでとうございます!治最高…………次回作も読ませていただきます! (2020年4月2日 10時) (レス) id: 99a2eebfea (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - やまうみ。さん» コメントありがとうございます!初期からのファン…!嬉しいです、私の作品読んでくださってありがとうございます(^ ^) なるほど…おじいさまの名言、必ずやどこかで使わせていただきます!もう少しで完成するので待っててくださいね〜(^ν^) (2020年3月31日 23時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - しぃらさん» コメントありがとうございます!ドSの治による荒治療はいかかでしたか?(^ ^) それはまずい!もう一度宮治の荒治療を受けることをお勧めします(無限ループ)← 死なないで〜…次回作もぜひ読んでくださいね! (2020年3月31日 23時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - ルナ・エイヴェルさん» コメントありがとうございます!過呼吸ぎみですけど大丈夫ですかッ(*_*) 結婚します(真顔)← ぜひぜひひっそりとニヤニヤ、キュンキュンしながら読んでください〜(^^) (2020年3月31日 23時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - 狐さん» コメントありがとうございます!いえいえ!そう言ってもらえるだけで明日を生きる活力になるので大丈夫です← ぜひぜひ、次回作もよろしくお願いします〜(^^) (2020年3月31日 23時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はるか | 作成日時:2020年3月22日 23時