身長差、0センチ《3》【夜久衛輔】

旅立つ前の猫にまじないを ページ48

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夜久side




「へえ、最近柳井と朝走ってるんだ。偉いね」

「なかなか起きらんなくていっつも(人1)困らせてんだけどな…」

「(人1)の声聞きたくてわざと起きられないフリとかしてんじゃねーだろうな？夜っくんよ」

「し、してねーし…」

「ちょっとどもるの怪しいんですが〜？」





外周が終わって、水分を摂りながら黒尾と海と話す。

…黒尾は本当、痛いとこ突いてくる。


まだ(人1)と朝走り始めて数日しか経ってないのに身体が感覚を覚えてきたのか、最近は5時近くなると目が覚めることがあって。

でも(人1)のモーニングコールが聞きたくて、わざと起きらられないフリをする…時がある。(人1)にバレてなきゃいいけど。




すると、まさしく今考えていた(人1)が、『お、みんないた』と体育館に顔を出した。





「どうしたんだ？」

『あ、いや、女子は明日の出発に備えてもう今日の部活は終わっちゃったから…挨拶に来た』

「そっか、もう明日かぁ…何時出発？」

『8時だよ。私まだ荷造り最後まで終わってないからやばい』

「急いで帰んなさい。柳井、俺達明後日部活休みだから、試合テレビで見るね」

『ありがとう、応援よろしく。カメラに向かってピースしておくね』

「やめなさいよ」





しばらく会えないけどじゃあね！と歩いて行く(人1)に黒尾と海は苦笑いして、

俺は「ちょっと(人1)と話してくる」と苦笑いする2人の返事も待たずに背中を追った。






「(人1)」

『夜っくん』

「緊張してる？」

『…してない』

「…」

『…って言いたいけど、かなりしてる』

「ん。素直でよろしい」





どうせそんなことだろうと思った、なんて。

(人1)の両手をそっと包んで、揺れる視線を捕まえて、しっかりと合わせた。





「…大丈夫だ。(人1)はもう、誰が見てもコートに必要不可欠なエースだから。俺は何も心配してない」

『…！』

「(人1)の自主練と練習試合見てた俺が言うんだ、自信持て。


…そんで、楽しんでこいよ！」





俺の言葉に、(人1)は肩の力が抜けたように、ふふ、と笑って。

…俺の、大好きな優しい顔を向けた。






『ありがとう。絶対絶対、勝つからね』

「おう、頑張れよ」

『…朝、ちゃんと起きて走ってね』

「はは、その心配は今いいから」





そっと抱きついてきた(人1)の背中に腕を回して、


"どうか(人1)が満足いく試合が出来ますように"なんて。



そう願いを込めて、まじないのようにこっそり髪に口付けを落とした。

【作者から！】→←時には新鮮さも大事ですが

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