猫と月・2 ページ44
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『…今の録音しとけば良かった。黒尾に聞かせたら泣きそう』
「やめてください」
『冗談だって。でも、顔つき変わったね。初日はもっと何かを諦めてるような、そんな顔してた。
…まるで、ちょっと前の私を見てるようなそんな気分だったもん』
「…柳井さんもそんな時期があったんですね」
『そりゃあ私も人間だし、この身長だし。自分の未熟さに絶望してたよ』
今でも未熟だし絶望することあるけど、なんて付け加えれば、月島くんは眉をピクリと動かした。
その様子に、やっぱり月島くんも経験あるか、なんて確信してしまった。
『でも、今は絶望しても引きずらないようになった。未熟でも、怖くなくなった。未熟だけど、私がエースとしてコートに居続けれる理由を、みんなが教えてくれたから。
そんなみんなと、少しでも長くバレーしていたいから、引きずってる暇ないんだ』
「…」
『…まあ、上手くいかなくて、楽しくなくて絶望してた時、その"理由"を最初に気づかせてくれたのは、チームメイトじゃなくて夜っくんなんだけど』
「…そんなことだろうと思った」
『月島くんその顔何?やめて』
夜っくんは私の救世主なんだよ、と言うと「聞いてません」と返された。可愛くないな。
「…あんま色んなところで尻尾振らない方がいいですよ」
『尻尾?』
「あの人、そういうの無縁そうな顔してしっかり縄張りあるなって思ったんで」
『…縄張り?何の話?』
「分からないならいいです、じゃ」
『あっ、8月また東京合宿来るでしょ?音駒!その時また会おうね!どうせ私学校いるだろうし。自主練も見せてね』
「…来ないでもらえると助かりまーす」
月島くんは貼り付けた笑みを浮かべて去って行った。
…生意気な弟って感じだ。可愛げはないけど悪くないかも。ツンデレで。
なんて1人で考えて大きな背中を見つめていると、「(人1)さん、」とまた声をかけられた。
『影山くんだ。なに、さっきから烏野ばっかなんだけど私好かれてる?なんちゃって』
「…?」
『ごめんね、何でもない…合宿お疲れ様』
「はい。あの…サーブ、みてもらって…ありがとうございました」
影山くんはそう言って、綺麗にお辞儀をした。
あまりに突然すぎて、慌てて顔を上げさせた。
『帰ったらすぐ一次予選だよね?』
「うす」
『そっかぁ…』
早いね、なんて、
空を飛んでいく烏を見ながらそう呟いた。
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はるか(プロフ) - Lunaさん» コメントありがとうございます!めちゃくちゃ嬉しいです…!これからもそう言っていただけるよう頑張るのでぜひ今後もよろしくお願いします!m(_ _)m (3月22日 1時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
Luna(プロフ) - もう、めちゃくちゃ胸キュンしちゃいました…。ほんと素敵なお話をありがとうございます…!!やっくん、かっこよすぎます!!! (3月17日 11時) (レス) @page30 id: ae56522889 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - chia.さん» コメントありがとうございます!集合写真はずるいですよね〜…泣くに決まってますよ…本当に… ありがとうございます!更新頑張りますね(*^^*) (3月16日 2時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - わにゆずさん» コメントありがとうございます!一緒の方いてテンションぶち上がりました(^∇^)あれは音駒好きにはたまらんですね!モチベ上がりまくりですよね!どうか勉強に集中出来ますように…(^^) (3月16日 2時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - 雪さん» コメントありがとうございます!私も夜っくん好きなので書いてて楽しいです(^^) 全然拙くないです!直球で伝わってます!嬉しいです!これからもこの作品をよろしくお願いします!(*^^*) (3月16日 2時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はるか | 作成日時:2024年3月8日 8時