身長差、0センチ《3》【夜久衛輔】

蕩けるのは何の所為か ページ22

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＿＿合宿6日目、対森然。

この試合が終われば昼の休憩に入るけど、28-27と、互いになかなか2点差をつけられずに取って取られてを繰り返していた。


スパイクが少し乱れてレシーブされて、スパイカー達が助走をしているのを、ただひたすらに、視線を動かして見る。




『(…森然は、レシーブ乱れたら基本センターからの速攻が定石、でも、負けてる今、確実に決まるのは、レフトのエース一択…！)』



セッターの指先からボールが離れた瞬間、素早くレフトへ移動する。

ギュッ、と足先まで力を込めて、上へ飛ぶ。



バンッ！とボールを叩き落として、29-27の、音駒の勝ちで試合は終わった。





「(人1)、ナイスブロック！」

『あぃ…』

「うわっ、ちょっと急に倒れないで、なに！？」

『あつい…つかれた…ゆかつめたい…』

「汗拭きなよ〜…あと水分も摂らないと」

「ほら女子の試合の方が長引いたから男子見てるよ、夜久いるよ」

『いないって…』



部員達があーだこーだ言ってるけど無視して床に寝転がる。動くとひんやりが続いて気持ちい。


すると、「(人1)ちゃん、」と美声が耳に入ってきた。

そのままの体制で顔を向けると、烏野の男バレマネージャーの潔子ちゃんが私の近くでしゃがみ込んだ。





『ごめんねこんな体制で…どうしたの？』

「先生方からアイスの差し入れ貰ったんだ。溶けちゃうくらい暑そうだし、音駒のみんなで食べに来たらどうかなって」

『アイス！？食べる！行く！』




スイカといいアイスといい、差し入れがありがたい。

ピャッと起き上がってみんなで潔子ちゃんの後についていった。






「お、来た。もう床に寝転がるの終わったのか？」

『え〜、やっぱりいたんだ夜っくん。部員達の嘘かと思ってたのに』

「女子の試合白熱してるって耳に挟んだから見てた。最後ナイスブロックじゃん」

『えへ、ありがとう』




潔子ちゃんからアイスを貰うと、あの時みたいに夜っくんが手招きして、日陰でアイスに齧り付いた。


ソーダ味が喉から全身を爽やかにしていく。





「ちょ、ははっ、(人1)、髪の毛食べてる」

『え、うそ』

「もー…そんなに慌てなくてもアイスは逃げないからな」





スッと髪の毛が掬われて、頬に張り付いていた髪が耳にかけられる。


ありがとう、と言おうとしたけど、







「…ん？」







＿＿夜っくんがあまりにも蕩けたように目を細めて笑うから、


私は何も言えずに夜っくんを見つめるしかなかった。

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