身長差、0センチ《3》【夜久衛輔】

夢の中で逢いましょう ページ15

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夜久side




「なあ夜久、」

「黒尾黙れ、今素数数えてるから」

「つまり心臓バクバクで心落ち着いてないんだな」





寝ている(人1)を抱きかかえてゆっくり廊下を歩く。

音駒の部屋まではもう少し。


2日前にやらかしてしまった前科がある俺を心配してついてきてくれた黒尾と海の声も、今はほぼ意識の外。





『んん…？ん〜…ふ、』

「わ、ちょ…！(人1)、服引っ張んな…！」

「え〜？なになに見せてよ夜っくん」

「やだ。お前には絶対見せねー」




ぐ、と一瞬身体に力が入って、俺の胸におでこを擦り寄せる(人1)。

口元が赤ん坊みたいに、むにゃ、と動いて。




「(…試合の時めちゃくちゃ冷静でカッコいいのに、こんな一面もあるとかギャップやばくね？)」




可愛くて、愛おしくて。

後ろの2人には見せたくなくて、(人1)の後頭部を更に俺の胸に押し付けた。





「…寝てる人ってさ、全身の力抜けてるから持ち上げるのも、その状態で歩くのも結構キツいんだって」

「そうか？普通だけど…(人1)体重何キロ？」

「それ教えちゃったら(人1)と絶交させられそうだから言わない。けど、」

「…？何だよ」

「(人1)は軽いし夜久は結構筋肉つけてるってのもあると思うけど…仮に力抜けてて重くても、恋人とか夫婦とか、愛の力で抱えられた、っていう人達が結構いるらしいよ」

「…愛、か」

「…夜久はさ、(人1)のこと好きでいいんだよね？」




南にそう聞かれて、すぅ、すぅ、と寝息を立てる(人1)をジッと見つめる。

閉じられている瞳は、俺を映してはいないけれど。






「…うん。(人1)が今もこの先も、俺の夢だけを見てくれてたらいいのに、って思うくらいには好きだ」




どんなに願ったって、(人1)のことは周りが放っておかない。

でも、他の奴らより少しでも長く、多く、俺のことを考えていて欲しい。もちろん、夢の中でも。




独占欲とは似て異なる俺の言葉に3人は、「まぁ、知ってたけど」と苦笑いした。





「夜久の夢なら俺もいるんじゃね？」

「ふざけんな帰れ」

「俺は一緒にいないかな」

「海は〜…やっぱりダメ」

「ダメか」





音駒の部屋について、(人1)を布団の上におろす。

未だ服にしがみつく手を、名残惜しく離して。





「…おやすみ、(人1)」





みんな廊下にいて、誰も部屋にいないことをいいことに、




こっそり、離した(人1)の手首に口付けを落とした。







…薄く開いた唇に触れるのはきっと、今じゃない、いつか。

誰にも言えない猫の夢→←猫はよく寝る生物である

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