交わる先の適温 ページ10
.
一瞬の静寂の後、ワアッと会場が盛り上がった。
私は床に座り込んだまま動けず、駆け寄ってきて私を次々に抱き寄せて泣き笑いしたみんなの顔を見ていた。
『勝っ…た？』
「勝ったよ！(人1)、全国行けるよ！」
『ぜん…こく…全国！？』
「うん！」
私はみっちゃんに肩を借りて立ち上がる。
挨拶を済ませた後、表彰式始まる前に足を休ませろ！と言われたのを『トイレ行きたいんで！』の一言で躱して会場の廊下を進む。
ちゃんと、終わってから休憩する。
だから、だから今は＿_
『…夜っくん！』
「…(人1)、」
すぐに、今の気持ちを伝えたかった人。
会いたくて、駆け寄りたくて。思うように動かない足を動かして夜っくんに近づこうとすると、慌てて駆け寄ってきてくれた。
＿＿同じ目線。目は互いに逸らさない。
距離が近づいて、あのね、と口を開いた時、夜っくんは私の両頬を思い切り摘んだ。
「バカ！！」
『えっ、！？てか、痛…』
「本当バカじゃねーの！？一歩間違えりゃ肉離れになる可能性もあったんだぞ！？」
『…うん、』
「うんじゃねーよ、もう…無事で良かった、本当に…全国出場、おめでとうな」
夜っくんはいつもみたいに笑って私の頭を撫でる。
いつもだったらそれで満足なのに、今日は物足りなくて。
試合後は出なかった、込み上げてくる涙を抑えきれなくて。
『…夜っくん』
「ん？おわ、っ！？」
『う〜〜っ…ごめ、夜っくんの顔見たら安心して涙が…っ、
汗拭いたけど、臭かったりキモかったりしたらごめん、今だけ許して……っ』
ポスン、と夜っくんの肩に顔を寄せる。
そして夜っくんの背中に腕を回してぐずぐず泣けば、夜っくんの両腕もゆるりと私の背中に回って。
それから赤ん坊をあやすかのように片手を私の後頭部に回してポン、ポン、と優しく叩いた。
「…頑張ったな。立派だったぜ、エース」
『…ありがとう。でも、夜っくんがいてくれなきゃ、ここまで来れなかった』
「…そうか？(人1)の実力もあるだろ」
『あるかもだけど…試合中に思い出すのは、いつも夜っくんの言葉だったから』
夜っくんの体温は私よりも少し低くて、
でも、心に溶けそうなほどあたたかい。
トクトクと聞こえる夜っくんの心音さえ心地良くて、
「(人1)…？」
『…ごめん、もう少しこのままがいい、』
「…おう」
ただ、温もりを交わらせていたくて。
夜っくんの服をギュッと握った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1019人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
雨音 淡桜 - 17ページ冒頭、読んだ瞬間むせかえって窒息しかけました（笑死） (3月25日 16時) (
レス) @page17 id: e6a1afaa78 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - 凛さん» コメントありがとうございます！あのシーン夜久さん好きには堪らないですよね…いっぱい夜久さんを映してくれて良かった…(^^) これからもカッコ可愛いうちの小説の夜久さんをよろしくお願いします！ (3月9日 23時) (レス) id: bc0669ada1 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - kis09170810さん» コメントありがとうございます！映画やばかったですよね…私はいまだに泣いてしまいます…この先もしばらくもどかしい展開が続きますのでハラハラしながらお読みください…(^^) (3月9日 23時) (レス) id: bc0669ada1 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - 風佳さん» コメントありがとうございます！そういっていただけるとめちゃくちゃ嬉しいです(^^) ちょっと本能出てしまう夜久さんマジ性癖です…笑 (3月9日 23時) (レス) id: bc0669ada1 (このIDを非表示/違反報告)
凛(プロフ) - 私も映画で、「もっと〜？」ところがすごく好きです！というか映るたびに声が聞こえるたびにニヤニヤしてます笑 夜久さんのかっこよさと可愛さに悶えながら読ませていただいてます。続き楽しみにしてます！ (3月9日 1時) (レス) @page48 id: fcb07708b9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：はるか
| 作成日時：2024年2月26日 21時
