身長差、0センチ《2》【夜久衛輔】

姿を現す独占欲 ページ18

.




夜久side




いつも帰りのHRを終えてもゆっくりしている(人1)が今日はせかせかと教科書達を鞄に詰めて足早に教室を出て行こうとする。




「今日急いでんじゃん。なんかあんの？」

『あー…今日16時半から取材だって。月バリの』

「へぇー、取材ね。月バリの…は！？月バリ！？」

『夜っくん声デカいです』




(人1)が苦笑いして慌てて謝る。

(人1)は鞄の持ち手をギュッと握ってから少し困ったような顔をした。




『本当はね、取材断ってたんだ。最初私の単独インタビューでページ組んでたっぽくて。

でも、私は1人じゃ勝てないから、チームメイトがいるから強くいられるんですって言ったら、私のインタビューもするけどチームの特集もしますって言ってもらって。とりあえず了承した感じ』

「なるほどなぁ…いやでも凄いなマジで」

『ありがとう…？まあ、見開きの片面らしいから大したことないかもよ』




じゃあ行くね、と(人1)は手を振って走っていってしまった。

片手を上げたまましばらく廊下を見つめていると、(人1)の席を挟んだ先にいる黒尾が「野良猫みてえだな」と声をかけてきた。




「は？」

「(人1)だよ。アイツずっと同じ場所にいないでどんどん先に、違うところに行こうとしてる。自分の思うままにな」

「…」

「なあ夜久、ずっと聞こうと思ってたんだけどさ、お前って(人1)のこと好きなの？」




クラスから人がばらばらと出て行って、教室には俺と黒尾と、一緒に部活に行こうと俺達のところに来た海だけになった。





「…どういう意味で？」

「それわざわざ聞くかフツー…恋愛感情抱いてるかいないかって聞いてんの」





小学生じゃあるまいし、と笑う黒尾の揶揄いも今は素直に入ってこない。


…考えたことはある。

(人1)が彼女だったら楽しいだろうな、って。







「…違う」

「え、」

「今は、彼女にしたいとかそんなんじゃなくて…ただ、隣で何気ないことで笑っててくれたらそれでいいなって」





そう言うと、黒尾と海が無言で視線を合わせて、

それから苦笑いしながらため息をついた。





「お前の言動が恋じゃねーなら何なんだよ、独占欲か？」

「…独占欲？」

「他の男にチヤホヤされるの見るの嫌とか、何でも知ってたいとかそういうの」





その言葉に、ドクンと心臓が跳ねる。


そうか、これは、紛れもなく＿＿






「…独占欲、かも…」






そう、認めてしまった俺を黒尾が無言で見つめていた。

人はその感情を何と呼ぶ→←夏はもうすぐそこに

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す