不安なことなどない。 ページ12
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開かれた扉から、ぼんやりと光が差し込む。
そして、浮かぶシルエット。
思い浮かべた人の、声。
「(倫太郎、)」
チカ、と眩い光が私を照らして、
見れば、携帯のライト。
「チッ、過呼吸か…今袋もないしな…」
倫太郎はゆっくりと、でも足早に私に近づいて、
そっと、抱きしめた。
グッと後頭部を押され、肩の位置に顔がくるようになった。
「大丈夫、俺、ここにいるから。ゆっくり息吐いて」
背中をゆっくりとさする倫太郎。
昔のことを思い出して、なんだか安心して。
言われた通り息を吸いすぎず、ゆっくりと息を吐くのを繰り返していれば、
次第に呼吸のリズムを取り戻していった。
ぱちり。
そのタイミングで、電気がつく。
「り、んたろ…」
「声出てんじゃん。よかったよかった」
「こわか、った…」
「…まああん時の事はそりゃトラウマになるでしょ」
落ち着いたと思ったら、ポロポロと溢れ出す涙。
倫太郎の肩口に顔を押し付けたまま、ぐずぐずと泣く。
「うえ、うぅぅ…」
「よしよし」
泣きじゃくる私の背中を、トントンと優しいリズムを刻んで包む。
ああ、昔と同じだ。
あの時より、少し体格差はついてしまったけど。
安心する温もりと、大きな手。
もう、不安なことなどなかった。
「りんたろ、のバカァ…」
「え、何で俺唐突にdisられてんの」
「やさしいのが、こわい、」
「は?せっかくの親切心無駄にすんなよバーカ」
顎をつかまれ、倫太郎の方を向かされる。
そっと、瞳から溢れる涙を指が攫っていく。
「…もー泣くなって、ね?」
「…うん、ありがと、ひぅ、」
「プッ…ブサイクだ。いつもブサイクだけど」
「鼻つまむのと突然の悪口やめてよ」
フフ、と倫太郎と笑い合う。
いつもみたいに、怒ったりしない。
それが、倫太郎なりの元気付けだと知ってるから。
「不安だから、手だけ、お願い…」
「え〜しょうがねーな〜…10チューペットで」
「10は多くない?腹壊すよ」
「(人1)と違ってヤワじゃないから」
それでも、ギュッと。
強く、優しく私の手を握る。
心から大丈夫だと、そう思った。
そうして私達はみんなのいる体育館に戻ったのだった。
…戻ったら双子が泣きながら飛びついてきて、ちょっと面白かった。笑
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あやね - 「離れ離れの1年ちょっと。」のところの角名君の出身地は、愛知県です!! (2022年11月2日 18時) (レス) @page4 id: 04b5e98dd0 (このIDを非表示/違反報告)
すなりんん - 涙が勝手に溢れてきましたごめんなさい「?」 (2020年4月22日 1時) (レス) id: 22d4d41058 (このIDを非表示/違反報告)
紺(プロフ) - え、好きです (2020年3月24日 10時) (レス) id: c01d9ddcd5 (このIDを非表示/違反報告)
のん - 再び失礼いたします。完結おめでとうございます!!!!角名はやっぱ色気の塊ですね!えっrrr((素敵な推しをありがとうございました!治も楽しみにしております。がんばってください!! (2020年3月22日 23時) (レス) id: a9c340b6bb (このIDを非表示/違反報告)
亀さん - 完結おめでとうございます!!!やっっっっと結婚しましたね!!!←角名くんすきぃ……次回作も読みます!!!佐久早好きなの分かりすぎて泣…………サム楽しみにしてます!!! (2020年3月22日 22時) (レス) id: 1af3b4280f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はるか | 作成日時:2020年3月8日 1時