身長差、0センチ【夜久衛輔】

狭(せば)まった視界に光を ページ38

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夜久side





『…っ、痛いっ、』

「ごめ、あぁっ、動くなって…あ、絆創膏くっついた」

『…3回目だよ、夜っくん』

「う、仕方ねーだろ…！こういうの慣れてねーんだから」





先同士がくっついてしまった絆創膏をはがして新しい絆創膏の台紙をめくる。


かろうじて血が止まった(人1)の細い指は、よく見れば細かい傷が沢山ある。

それは、何よりも努力を重ねてきた、揺るぎない証拠だった。




絆創膏を巻きながらチラリと(人1)を見る。

俺が触れている指の先を見つめながら、ひたすらポロポロと涙をこぼしている。




「(…かなり重傷だな、コレは)」





今度こそ絆創膏を巻き終えてから、俺は(人1)の頬にそっと触れて、こぼれ落ちる涙を親指で拭った。





「泣きそうなら今のうちにたくさん泣いとけ。全部拭ってやるから」

『っ…きたないから、やだ…離して』

「ああコラ、目擦んなって…！あした目開けられなくなるぞ」

『元々ぶすだから、べつにいいもん…』

「ぶすじゃないし俺が嫌なの！」





俺を押し退けようとする腕を捕まえて、また包み込む。

(人1)はしばらくあーだこーだと嫌々首を振っていたけど、そのうち対抗しても無駄だと思ったのか、大人しくなって、やっと口を開いた。





『…最近、自分がコートにいる意味って何だろ、って考えることが多くなって。

ちょっと努力すれば私なんか簡単に超えていけるような人達は周りにたくさんいる。その人達を押し退けてまで私が試合に出ることに、意味はあるのかって…

最後の試合だ、負けたら終わりだ、だからひとつでも多く試合して、勝ちたい。エースの名に恥じない動きをしたい。そう思えば思うほど、サーブもスパイクも何もかも、全部が上手くいかなくなっちゃった。

後輩にも、いやなこと言わせちゃった…本当、主将なのに、女バレのエースなのに、情けないよねこんなの…』





ハラリ、(人1)の髪の毛が顔にかかる。

その内側に見えるのは、諦め。




…本当につくづく思う。






「…(人1)は本当、悩んでると周り見えてねーよなぁ」

『…は、』

「つーか薄々思ってたけどやっぱ(人1)ってエースなんだな」

『まあ、一応…みんながそう言うから』






ほら、やっぱり全然見えてない。

俺は顔にかかった(人1)の髪を耳にかけて、視線を合わせた。





「あるじゃん。コートに立つ意味」

『え…？』






「みんな(人1)のこと、"エース"だって認めてくれてんじゃん。それが、意味だろ」

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