始まりをくれたキミへ ページ36
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「…せんぱい、先輩?」
『…っえ、』
「大丈夫ですか?」
『あー…大丈夫。今朝見た夢が怖くて…なんか思い出しちゃった。ごめんね』
「…いえ、もう19時ですよ?私お先に上がりますね」
『あ…うん。お疲れ様』
後輩に声をかけられてハッとする。
そっか、今日みっちゃんの代わりにこの子が19時までならって一緒に残ってくれてたんだった。
…もう少しだけサーブやってこうかな、って思った時、体育館を出て行こうとした後輩が「先輩、」と振り返った。
「最近、ちょっと先輩が怖いです」
『…!』
「前はもっとニコニコしてて、どこか気持ちに余裕があって…でも今は、全然笑ってなくて、いつも悔しそうな顔してます。
…分かってます、先輩が抱えてるものの重さ。私が偉そうに言えることでもないってことも。でも、今の先輩には怖くて声かけられないです。私だけじゃなくて、みんな」
後輩はそれだけ言い切ると、私が口を開く前に「…生意気言ってすみません。お先です」と今度こそ出て行った。
『…生意気なんかじゃない、全部、本当』
私は胸のむしゃくしゃを紛らわすためにひたすら1人でサーブを打ち続けた。
…決まらないサーブを、何本も。
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「…リベロより、スパイカーの方が向いてると思う」
__8年前のあの日、相手チームの男の子はそう言った。
「あ、レシーブ下手ってわけじゃないけど…試合前のアップでちょっとだけスパイク打ってたじゃん。
…あん時の方が楽しそうな顔してたぜ」
『…でも、チビだし』
「…?身長は関係なくね?」
『か、関係あるに決まってるじゃん!』
思わず大きな声が出る。
何ムキになってんだろ。こんな、名前も知らない初対面の男の子の前で。
そんな私に、男の子はキョトンと目を丸くした後、私の大声なんて気にしてないみたいに笑った。
「関係ねーよ!バレー好きなんだろ?」
『うん、』
「スパイカーやりたいんだろ?」
『やりたい…!』
「なら、身長は関係ない!ただひたすらに頑張るのみだ!
そしてこーこーせーくらいになったら俺はいつかスパイカーになったお前のスパイクもサーブも、全部拾ってみせる!」
『…私、女なんだけど』
「えっ!?…ご、ごめん、男かと…」
名前も知らない男の子。
その"いつか"があるのかは分からないけど。
『…ま、いいか。約束ね』
__そう指をきり合ったキミに、
成長した私を見つけて欲しいのに。
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はるか(プロフ) - わにゆずさん» 再びコメントありがとうございます!やっぱりそうですよね!目とかにかかるくらい長かったら萌えます、ぐへへ(激キモ) 絶対見逃せないですね!公式情報を待ちましょう…!フヒヒ(激キモ) (2月29日 0時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
わにゆず(プロフ) - たしかに、大人になった夜久さんってノーセットだと前髪長いかもしれません…!うへへ(キモい)、夜久さん推しとしてはこれは見逃せないです…グヘヘヘ(キモい) (2月27日 18時) (レス) @page49 id: b8157db853 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - 佐藤310さん» コメントありがとうございます!まさかの報告嬉しいです笑 日焼けのことですよね!やっぱり真っ黒になりますよね…私自身そうだったのですごく分かります。やっぱり日焼け止めを塗ってもらってるって結論にしようかな…( ・∇・) アンサーありがとうございました! (2月27日 1時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - ▼げきからたばばさん» コメントありがとうございます!そして一気読みありがとうございます!キュンキュンしていただけて嬉しいです…!これからも頑張るので応援よろしくお願いします!(^^) (2月27日 1時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - むぎちゃさん» コメントありがとうございます!えーん嬉しいです…!夜久さんはイケメンの中のイケメンと思いながら書いてます!気に入ってもらえたなら嬉しいです!これからもぜひよろしくお願いします!(^^) (2月27日 1時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はるか | 作成日時:2024年2月11日 21時