角名くんに関西弁喋らせたい。【角名倫太郎】

心音 ページ47

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謝る先輩に、私も謝った。

先輩の気持ちも嘘だったとはいえ、利用するマネをして悪かった、と。




和解の握手をしようとしたけれど、倫太郎くんが「(人1)ちゃんと話あるんで邪魔です」と先輩を一睨みして追い出してしまった。






「…そこまでせんくても」

「いいの。(人1)ちゃんに酷いことしかけたからこれくらいしとかなきゃ」




その時、5限開始のチャイムが少し遠くから聞こえた。こちらに歩いてくる倫太郎くんを手で制する。






「倫太郎くん、5限、始まる」

「知ってる。けど(人1)ちゃんを放っておけないから…服、直しな」

「っ…」

「ごめん。怖かったよね。証拠うんぬんよりやっぱもっと早く助けるべきだったかも」






私の手の制止を軽く交わして私の前にしゃがみ涙を拭う倫太郎くん。ちょっと哀しげな顔が、目尻に触れる冷たい指先が、優しくて。私はぶんぶんと首を横に振った。







「見つけてくれて嬉しかった……ありがと、」

「うん、」

「……けど、私のこと、迷惑ちゃうの？」

「は？何の話？」






私の質問に素っ頓狂な声を出して倫太郎くんが瞬きを繰り返す。あ、ちょっとかわええな。なんて場違いに思って瞳にその姿を閉じ込めた。







「…関西弁、倫太郎くん関西出身やないのに私が勝手に期待して、無理矢理言わせとる感じ…で、あんまり乗り気やないって、聞いて」

「関西弁乗り気じゃないって俺一言も言ってないよ」

「…けど、仲津さんが、」

「あれ(人1)ちゃんと俺を引き離すための陽葵のウソ。陽葵が俺を好きだって聞いたでしょ。



…別に俺は、乗り気やないわけちゃうよ。迷惑なんて思っとらんし」







ふふ、って笑う倫太郎くんはサラリと関西弁を述べる。あざとい。ずるい。
好き、の気持ちが愛おしくこみあげてくる。恋なんてしなきゃよかった、なんて気持ちを振り切れるほど。







「……倫太郎くん、わがまま、言ってもええかな」

「どうぞ」

「ぎゅっと、抱きしめて欲しいです」

「お安い御用です」






キッチリ直った制服に安心して、倫太郎くんは自分のブレザーを羽織って私を手繰り寄せた。トクリ、トクリと聞こえる優しい心音に、ずっとこのままでいたいと願いたかった。



ああ、ほんと。








「好きやなぁ…」









「…えっ」

「……あっ」








倫太郎くんのブレザーをぎゅっと掴みながら思った言葉は、胸元でアッサリと溢れてしまった。

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