・ ページ3
.
じゃあね、とバレー部の面々に手を振って、
半歩先を歩く治に追いつく。
暗くなるのが早くなってきたこの頃。
さりげなく車道側を歩く治の隣に並んで一緒に帰るのはもう日課。
今日の出来事も、明日の出来事も、過去のことも、一年後のことも。
気軽に、すんなりと。2人だけで話すほんの数十分のこの時間が、私にとっては大切で、大好きな時間やった。
……ただ、一点を除けば。
「…治、」
「ん？」
「そのお菓子…」
「今日家庭科で作った言うて1年の女の子くれてん。めっちゃ美味いで」
いや知っとるし。何ならその現場見とったし。
治の手元いっぱいにあるラッピングされたクッキー達。今日は治の誕生日でも何でもない。
じと、と見れば、「そんな目で見てもやらんからな」なんて言う。
ちがう。
欲しいわけじゃないの、気づかへんの。
「…治は、お菓子くれる子やったら誰でもいいん？」
「は…？」
醜い嫉妬は、喉の奥から簡単に飛び出していく。
飛び出すまでは我慢できるのに、
一度飛び出したら、止まってはくれない。なんの性？
ピタリ、私の足が止まって、それにつられるように治の足も止まる。
「なにそれ」
「いやなにそれちゃうねんけど。治は隣で他の女から貰ったお菓子食って美味いって言われとる私の気持ち考えたことあるん？」
唇、爪、握って、噛み締めて。痛みなんか感じんかった。心が痛すぎて。
喧嘩みたいにしたかったわけじゃない。
ただ、貰ってさも当たり前みたいな顔をする治に心底腹が立った。
私はなんの為の彼女なん？って。
全てが醜くて嘲笑うように見えた。
(人1)、って。不安がちに揺れた瞳が私を呼ぶ。けれど、素直に成れなかった。
伸びてきた手を、払い退けた。
「…そんなにお菓子くれる子が好きならその子と付き合ったらええんちゃう？よっぽど魅力あると思うで、」
「待てや。何勝手に話進めとるんや。オイ聞け、」
「うるっさいねんこの食オタ野郎。私今めちゃくちゃ怒ったわ。もう治なんか知らん、し…！」
待てや、と言われた手を振り切って、
意味のわからん逆ギレをして私は治の前から走り去った。
可愛くな。こんなちっぽけなことで。
やっぱり、魅力なんかこれっぽっちもあらへん。
噛み締めた唇が、握りしめた爪が、今になって痛くなった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 928人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
*H・K* - 同じ“嫉妬”っていうお題？なのにいろんな人で書けるなんてすっっごいと思います！これからも頑張ってください♪ (2021年9月26日 8時) (
レス) @page4 id: b7f7467b2d (このIDを非表示/違反報告)
たまご - こんばんわ！いつもこんな素敵な小説を書いてくださってありがとうございます！！先生の小説をよんで、いつも元気とキュンキュンを貰えます！(o^∀^o)これからもずっと応援してます(≧▽≦)いつもいつもほんとに幸せをありがとうございます！頑張ってください(^^)/ (2021年8月15日 0時) (レス) id: 6e4fdc75b3 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - あるこばれーの。さん» いつもありがとうございます(^^) おこがましくないですよ！とても嬉しいです、、！最後まで頑張りますのでお付き合いよろしくお願いしますm(._.)m (2020年10月29日 20時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - kanaさん» いつも私の作品見ていただきありがとうございます(^^) 感謝です、幸せになります！ (2020年10月29日 20時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - smile0312さん» ありがとうございます(^^) 幸せになります！ (2020年10月29日 20時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：はるか
| 作成日時：2020年8月14日 23時
