終止符は打たれない。 ページ47
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「飛雄…もうすぐ部活始まるからちょっと離れて…」
「離れようとしたらお前の口に温玉突っ込んで失神させるからな」
「生死に関わる冗談やめろ」
12月。
春高予選を勝ち抜いた私達は、1月の大会に向けて部活に勤しんでいた。
「そういえば京治くんに言ったの。付き合ったって」
「言わなくていいだろ別に」
「よくないの!そしたら今度2人で俺に挨拶しにこいって言われた」
「絶対行かねえ。どうせ春高で会うだろ」
聞けば、飛雄はどうやら合宿最終日の京治くんのプロポーズ(冗談)を未だ根に持ってるみたいだった。
あれ冗談じゃん、と言えば、
赤葦さんの目は本気だった、と苦い顔をしていた。
「そんな警戒しなくても京治くんは飛雄から私をとったりしないよ」
「根拠は」
「ないけど、私が飛雄を好きだからね」
「…うるせえボゲェ」
飛雄は少しだけ顔を赤くして、
まるで照れ隠しのように私の髪を結い始めた。
「…髪伸びたな」
「だって飛雄が切るなって言ったんだもん」
「ああ。めちゃくちゃ結いやすい」
「…飛雄、本当に私の髪結ぶの好きだよねえ」
その言葉を言い終えると同時に、
飛雄が最も得意な三つ編みが出来上がる。
相変わらず手先が器用だな…と思っていると、
そっと飛雄に三つ編みを持ち上げられて、ちゅ、と毛先に唇を落とした。
「な、飛雄…!?」
「… 筒井つの 井筒にかけし まろがたけ 過ぎにけらしな 妹見ざるまに」
「…!そのうた、」
「…(人1)に教えてもらってから、境遇似てるせいか頭から離れなかった。
…ところで、お前の返事は?」
飛雄が髪を持ったまま尋ねる。
…そんなの、決まってる。
「… くらべこし 振り分け髪も 肩過ぎぬ 君ならずして たれかあぐべき 」
「…ははっ、そうか」
「もう…!覚えてくれたのはいいけど結婚するって意味だよって教えたじゃんバカ!恥ずかしい…」
くるくる。
横髪の毛先を指先で弄ぶ私に飛雄は笑った。
「でも満更でもねえんだろ」
「うう…」
「いいじゃねえか。お前は俺のためだけに髪を結えば問題ねえだろ」
「…ずるい」
それってつまり、そういうこと。
そしてきっと、この争いに終止符は打たれないのだと悟った。
私は飛雄につられて笑みを浮かべて、
そっと、寄り添うように。
愛しさを込めて、肩に頭を預けたのだった。
fin.
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ましゅ(プロフ) - ヒェ〜〜〜最高すぎました〜〜〜はるかさんって、センスの塊なのもそうですけど、ツンデレを扱う天才ですよね!?!?京治くん挟むのも天才〜〜〜大好きです!! (2020年6月21日 17時) (レス) id: 01c5a5310c (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - 狐さん» コメントありがとうございます!ギュンギュンしてくれたなら何よりです← 臣臣くんの小説ただいま執筆中なのでもう少しだけお待ちください〜!(^^) (2020年6月17日 17時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - チベットさん» コメントありがとうございます!そこに気づけてもらえて嬉しいです…このシリーズ完結したらぼちぼち色々書くつもりでいるのでまた覗きにきて下さいね〜! (2020年6月17日 17時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - しぃらさん» コメントありがとうございます!赤葦くん大好きなのでついつい導入させてしまうんですよね笑 はい!体調第一で頑張りますので佐久早くんの小説楽しみにしててくださいね!(^^) (2020年6月17日 17時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - 虹華さん» コメントありがとうございます!そう言ってもらえてめっちゃ嬉しいです励みになります(^^) 佐久早くんの小説楽しみにしててくださいね! (2020年6月17日 17時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はるか | 作成日時:2020年5月23日 23時