5歳児は納得いかない。 ページ5
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カタ、とスプーンを丁寧に皿に置いて、
ゆっくり、ゆっくり、私の方をみる飛雄。
その時の顔は、多分いつになっても忘れないと思う。
「美味しさがよく分からない?」
「う、うん…」
「どんなところが?」
「うぇ、っと…食感、とか…」
「…有り得ない」
こんな美味しいのに、と飛雄は温玉カレーを悲しそうな目で見つめていた。
何だか申し訳なくなって口を開きかけた時、
飛雄のママがため息をついた。
「飛雄。人には好き嫌いってものがあるの。アンタもニンジン嫌いだし、お姉ちゃんだって梅干し嫌いでしょ?
(人1)ちゃんは偶然、飛雄が好きな温玉が食べれなかったのよ。それは仕方のないことなの。
だから責めないであげて、ね?」
お母さんは優しく飛雄を諭そうとした。
きっと私がいるからだよね。いなかったら『コラ飛雄!!』とか言われてるんだろうなあ。
しかし5歳児の頭では、
納得がいかないことだってある。
「嫌だ!温玉食べられない(人1)なんて嫌いだ!」
「え、」
「コラ飛雄!!」
「バーカバーカ!!」
「お前がバカだ!いい加減にしろ!」
飛雄に嫌いと言われたのは初めてで、
思わず固まってしまった。
飛雄ママはすかさず息子の頭をはたき、『ごめんね(人1)ちゃん』と謝った。
あまりにも呆気なくでた、コラ飛雄!!に動揺を隠し切れないけれど、
とりあえず、大丈夫、とポツリと呟いた私の心を支配する感情は一つ。
「飛雄、」
「なに!」
「…私、多分一生温玉食べられないし、食べれてもカレーには乗せるつもりないから。
飛雄とは一生気が合わないね」
ぴくりと飛雄の眉が動いたのと、
頭を抱える飛雄ママが視界に映った。
「…"せんせんふこく"ってやつか?」
「よく分かんないけど多分そうなんじゃない」
「そう言われると意地でも食べさせたくなる」
「いやだ〜〜」
バチバチ、と誰にも見えないであろう火花を散らす私と飛雄。
こうして、温玉を巡る"好物論争"は、
あまりにも地味に始まってしまったのだった。
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ましゅ(プロフ) - ヒェ〜〜〜最高すぎました〜〜〜はるかさんって、センスの塊なのもそうですけど、ツンデレを扱う天才ですよね!?!?京治くん挟むのも天才〜〜〜大好きです!! (2020年6月21日 17時) (レス) id: 01c5a5310c (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - 狐さん» コメントありがとうございます!ギュンギュンしてくれたなら何よりです← 臣臣くんの小説ただいま執筆中なのでもう少しだけお待ちください〜!(^^) (2020年6月17日 17時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - チベットさん» コメントありがとうございます!そこに気づけてもらえて嬉しいです…このシリーズ完結したらぼちぼち色々書くつもりでいるのでまた覗きにきて下さいね〜! (2020年6月17日 17時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - しぃらさん» コメントありがとうございます!赤葦くん大好きなのでついつい導入させてしまうんですよね笑 はい!体調第一で頑張りますので佐久早くんの小説楽しみにしててくださいね!(^^) (2020年6月17日 17時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - 虹華さん» コメントありがとうございます!そう言ってもらえてめっちゃ嬉しいです励みになります(^^) 佐久早くんの小説楽しみにしててくださいね! (2020年6月17日 17時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はるか | 作成日時:2020年5月23日 23時