きっと、生き続ける。 ページ44
.
「…やめるん?バレー。もったいないで」
「分かっとるわ。せやけどやりたい事あんねん。お前と一緒や」
「いた!練のデコピンの痛さ地味に北と張り合うねんな…」
おでこを押さえていると、
後ろから(人1)さん、と声をかけられた。
「おお、2年生達…おつかれさま。ええ試合見せてもろたで」
「…まあ、負けましたけど」
「うん。アンタらは納得せんやろうなあ。結果も大事やし。
けど、本当にええ試合やったよ。みんな目ギラついとって、一生懸命で。
やから、今日の試合は誇ってええと思う。ほんで、来年リベンジしいや。北達に立派な姿見せんなアカンやろ?」
私がそう言って笑えば、北は『俺にもカッコええこと言わせろや』って拗ねた。
珍しい。あの北が戯けている。拗ねている。
ごめんごめん、と謝って、私は練を見て。
こっそり、北の服の裾をつまむ。
「…ほらお前ら、ボーッと突っ立っとらんとはよ着替え行くで」
「はあい…あれ、北さんは?」
「ええから」
練がみんなを連れて行ってくれた。
私と北を残して。
角を曲がる前に、こちらを振り返って、笑って。
「(…ありがとう、練)」
どこまでも頼りになる幼なじみに感謝しながら、
私は北の目を見た。
「…試合、お疲れ様」
「おん。さっきから何べんも聞いとるわ」
「はは、せやね。でも私が言いたかったのはお疲れ様もやけど、」
私は北の両手を取って、ぎゅっと握った。
私より少し大きくて、かたくて、少し冷たくて。
みんなの背を押し、鼓舞し続けてきた、手。
「…カッコ良かった。みんなの背中を押し続ける北が。どこまでも主将であり続けた北が」
「!」
「きっと、私とばあちゃんくらいしかアンタのカッコ良さは知らんと思うで。
…まあ他の人は知らんくても、ええけど」
ニシシ、と笑えば北がゆっくり私に近づき、倒れ込むように私を抱きしめる。
そ、っと背中に手を伸ばす。
ああ、心地よい。
「…お前が、応援に来てくれとって、良かった、」
「うん、」
「…ありがとうな、」
「…ふふ、ええよ。お返し。みんなの前で泣けんぶん、私の前で泣きや」
お疲れ様、主将。
北はその言葉に肩を震わせた。
北も人間。
悔しい、と思う。涙を流す。
「(大丈夫。今日の試合も、バレーの思い出も、北の中で生き続ける)」
きっと。
私はそう思いながら、北の背をさすり続けた。
821人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ミカ(プロフ) - 本当にこの作品を読んでいる時間が最高でした!シリーズの中でこのお話が一番好きだなって思いました。花言葉で心情の変化をを表したりするところ、流石です!!!セリフ一つ一つに深い意味が込められていて素敵でした!あと、私も北信介って名前の響き好きです(笑) (2020年5月25日 21時) (レス) id: ee1104400e (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - 狐さん» ありがとうございます!語彙力!笑 嬉しいですありがとうございます^ ^ 出来たので是非読んでみてください〜!! (2020年5月24日 23時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - しぃらさん» ありがとうございます!大丈夫ですか生きてください…!ふいに北さん花絶対似合う、って思ったら調べるのにめちゃ時間かかって後悔したんですけどね(・・;) 影山くんの小説もぜひぜひ!読んでくださいね! (2020年5月24日 23時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - チベットさん» ありがとうございます!いや小説出すほどのレベルじゃないですまじで笑 実は名前にも意味があるんです、キタキツネの天敵は犬らしいので…^ ^ 影山くんの小説でも探してみてくださいね (2020年5月24日 22時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - 虹華さん» コメントありがとうございます!最後の告白のところは実は書き始めたときからもう決めてました笑 意外とギザな告白好きそうだなって…笑 影山くんの小説もぜひぜひ読んでくださいね^ ^ (2020年5月24日 22時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:はるか | 作成日時:2020年5月3日 22時