その背中は、どこまでも。 ページ39
.
「何で(人1)がここにおるんや。しかもばあちゃんと…」
「信ちゃん。この子達な、転びそうな私助けてくれたんよ」
「…せやったんか。ありがとうな。何でおるか知らんけど」
「稲荷崎の試合見に来たからに決まっとるやろ」
「…見に来んでええ、って言うたんに」
お前そんな暇あらへんのやろ、とグサリと正論が刺さる。
確かにそうや。
センター試験は約1週間後。こんなところにいていい状況でもない。
けれど、
「…ホンマは、ネット繋いで兵庫で見ようと思うてたんやけど。
けど、アンタらが勝ち進んでいくなら、見れるのは今日しかない。
それならせめて、画面越しやなくて直接、頑張れ、って言いたかってん…あかん?」
きっと、稲荷崎は脅威やから勝ち進んでいく。
やから、遠くなってしまう前に、
北の背中を、みんなの背中を、押してあげたかった。
私の眼差しに、北はため息をついた。
「…お前がアカンくなっても知らんで」
「フッフ。心配されんくても合格します〜」
「ふはっ…今の笑い方、侑にソックリやったで」
「えぇ、嬉し…くはないな、」
北は笑って、おばあちゃんと視線の高さを合わせて、
いってくるな、と一言。
頑張りや、の言葉に頷いて私の方に向き直り、
ばあちゃんのこと頼んだわ、と言って背を向けて歩き出した。
その背中は、どこまでも。
「きた!!」
「っ…うるさ、」
「きっと、北は何でもそつなくこなすし、私の言葉なんて必要ないかもしれんけど!
…それでも、私はちゃんと見とるから。
いつも通り、後ろからみんなを支える"主将"であってな」
ニッとしながら言えば、
北は呆れたように苦笑いした。
「お前に言われんくてもいつも通りやわ」
「グゥッ…デスヨネー」
「…まあ、ありがとうな、(人1)」
ひらりと手を振って、今度こそ人の波に消えた。
ごめんな、行こか、とおばあちゃんに声をかければ、ぎゅっと手を握られて。
「…アナタ、信ちゃんと仲ええんやね」
「エッ…いや、ハイ…?」
「いつも信ちゃんと仲ようしてくれてありがとうな。
…あんな楽しそうに笑う信ちゃん、珍しいのよ」
きっとアナタも信ちゃんも、お互い好きなんやねぇ。
その言葉にさきちゃんはニヤニヤしだして。
私は否定もできんくて、
頬に熱をためながら、俯くのに精一杯やった。
821人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ミカ(プロフ) - 本当にこの作品を読んでいる時間が最高でした!シリーズの中でこのお話が一番好きだなって思いました。花言葉で心情の変化をを表したりするところ、流石です!!!セリフ一つ一つに深い意味が込められていて素敵でした!あと、私も北信介って名前の響き好きです(笑) (2020年5月25日 21時) (レス) id: ee1104400e (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - 狐さん» ありがとうございます!語彙力!笑 嬉しいですありがとうございます^ ^ 出来たので是非読んでみてください〜!! (2020年5月24日 23時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - しぃらさん» ありがとうございます!大丈夫ですか生きてください…!ふいに北さん花絶対似合う、って思ったら調べるのにめちゃ時間かかって後悔したんですけどね(・・;) 影山くんの小説もぜひぜひ!読んでくださいね! (2020年5月24日 23時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - チベットさん» ありがとうございます!いや小説出すほどのレベルじゃないですまじで笑 実は名前にも意味があるんです、キタキツネの天敵は犬らしいので…^ ^ 影山くんの小説でも探してみてくださいね (2020年5月24日 22時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - 虹華さん» コメントありがとうございます!最後の告白のところは実は書き始めたときからもう決めてました笑 意外とギザな告白好きそうだなって…笑 影山くんの小説もぜひぜひ読んでくださいね^ ^ (2020年5月24日 22時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:はるか | 作成日時:2020年5月3日 22時