機械ではない。 ページ35
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私の腕を掴む北の手が、熱くて、そして、強い。
どんな時も、私に触れる手は、ひんやりとしていたはずやったのに。
逃げようと腕を動かそうとしたけれど、押さえる力が強すぎて無理やった。
熱を帯びた北の瞳と、私の動揺を含んだ瞳とが絡まり合って、
空気が、変わっていく。ドクリ、ドクリと心臓が大きく音を立て始める。
「え、と…北、どないしたん…?」
「……」
「なあ、無言やめてや…いつもの意地悪のつもり?」
「…そんなん、ちゃうわ」
私の左手を掴む手がパッと離れて、
するりと私の頬をなでる。
左手があいて、今なら肩を押して逃げることが出来るのに。
絡まった視線を逸らせず、逃げれないまま。
「…なあ、」
「なに…」
「抱きしめてもええか」
「…は!?」
北はとんでもない発言をした後、待ってな、と一度私の手を離してTシャツを着て、
ゆっくり私の腕を引いて、やさしく私を包み込んだ。
なんだか展開についていけなくて、
それでも北の、どこか安心するような香りに包まれるのが心地良くて。
私の大きすぎる心音が、北に聞こえませんように。と願いながら、
ただ、北が口を開くのを待っていた。
「…犬塚も、かわええとあるな」
「は…な、に、急に、」
「俺がシャツ着る時、逃げるか思うたんに待っとったから」
「〜〜っ、それ、は…その、」
「ふふ、分かっとるから言わんでええよ」
何が分かっているのだろう。
私でさえも曖昧だというのに。
北はそのまま私の肩に顔をうずめて、
わがままやけどな、と言葉をこぼした。
「やっぱり、お前がまだ主将としておってくれたらなあ…って」
「!」
「こんなん俺らしくないけど、改めて思うたわ。
なんや今日も結構しんどかったから、お前の顔見たら咄嗟に身体動いとった」
ごめんな、と謝る北に首を横に振って、
背中に腕を伸ばして、優しくなでた。
この人だって人間だ。機械みたい、って言われても、機械ではない。
甘えたいときだってあるかもしれない。今みたいに、ごく稀に。
「側におらんくても、ちゃあんと見とるよ私」
「……」
「たまに甘えてくれてもええよ。優位に立てた気して嬉しいし」
「…お前はいつも変な方向に持ってくの得意やなあ」
顔を上げた北が、元気でたわ、ありがとお、って優しく笑って。
その眩しさに、愛おしさに。
「(好きだと言えたらいいのに)」
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ミカ(プロフ) - 本当にこの作品を読んでいる時間が最高でした!シリーズの中でこのお話が一番好きだなって思いました。花言葉で心情の変化をを表したりするところ、流石です!!!セリフ一つ一つに深い意味が込められていて素敵でした!あと、私も北信介って名前の響き好きです(笑) (2020年5月25日 21時) (レス) id: ee1104400e (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - 狐さん» ありがとうございます!語彙力!笑 嬉しいですありがとうございます^ ^ 出来たので是非読んでみてください〜!! (2020年5月24日 23時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - しぃらさん» ありがとうございます!大丈夫ですか生きてください…!ふいに北さん花絶対似合う、って思ったら調べるのにめちゃ時間かかって後悔したんですけどね(・・;) 影山くんの小説もぜひぜひ!読んでくださいね! (2020年5月24日 23時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - チベットさん» ありがとうございます!いや小説出すほどのレベルじゃないですまじで笑 実は名前にも意味があるんです、キタキツネの天敵は犬らしいので…^ ^ 影山くんの小説でも探してみてくださいね (2020年5月24日 22時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - 虹華さん» コメントありがとうございます!最後の告白のところは実は書き始めたときからもう決めてました笑 意外とギザな告白好きそうだなって…笑 影山くんの小説もぜひぜひ読んでくださいね^ ^ (2020年5月24日 22時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はるか | 作成日時:2020年5月3日 22時