好物頂上決戦【北 信介】

しまっておく感情。 ページ33

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「悪霊退散豆腐退散南無阿弥陀仏！！」

「何言うてんねん。箸向けんなや行儀悪い」

「アンタが一回それ私の口に突っ込もうとしたからやで」

「好き嫌いはアカンからな」

「うっっわ出た意地悪な顔！何ウキウキしとんねん…」







月日が経つのは、本当に早い。


葉の色は、緑から黄色に変わって。

9月。秋がやってきた。





結局夏休み中は部活も引退したから北に会うことも少なくて、

それでも新学期が始まった途端、いつも通りに抗争を繰り広げていた。




周りの人達には私が北のこと好きって何故かバレとって、(多分侑くんのせい)

北と言い争いしとるところを見られるたびにニヤニヤされた。






「(人1)さあ…告白とかせえへんの？北くんに」

「告…白……！？」

「おん…パンくずめっちゃ落ちたで。そんなビックリせんでも」






ごめんごめん、とさきちゃんに謝りながらスカートについたパンくずを払う。



とあるお昼休み、屋上。


今日は食堂やなくて屋上行ってみよ！なんて言うて、

購買でパンを買って心地よい風に吹かれていた時に、さきちゃんがポツリと私に問うた。






「…うん、告白はせえへんかな」


「え、何でですか！？」

「うぉ、ビビったァ…！」






告白はせえへん。


そう言った途端に、背後から聞き慣れた声がして。

振り向けば、なぜかそこには侑くんがおった。よう会うな。他の3人はどうしたのだろうか。

私がそんなこと考えとる間に、侑くんは私の手をガッシリ両手で勢いよく握った。






「俺の気持ち無駄にするんすか、(人1)さん！」


「いや、無駄にはせえへんけど…あんなに言い争いしとるんやで？

急に好きって言われても『何言うとんねんお前』って蔑まれるだけやん。

どうあがいてもバッドエンドにしかならへんから」


「そんなの関係あらへん。最近の北さんは、アンタとおると楽しそうやねん。

やから、」


「…ありがとうな、けど私はやっぱわがままやから、傷付きたくないねん」






私はやんわりと侑くんの手を離した。








「…この感情を抱いてしまった時点で、私の負けやねん。結局私が絆されて、弱み握られてもうた。

北がたまに優しかったんも、主将っていう接点あっただけで、深い意味はないと思うんよ。

…やから、この感情は、しまっておくねん」






私、好きになったらアカン人を好きになったんやなぁ。






痛みを隠すように笑う私の髪を、


少し強めの風が、乱暴になでた。

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