優しさに溺れる。 ページ31
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何も言わずに、ただ視線が絡まって。
沈黙が辛くて、北、と口を開いた時、
その北は、突然バッと腕を広げた。
真顔で。
「えっ…待っ、は…？」
「何しとんねん。さっさと来いや」
「いや、あの…？」
「泣きたいんやろ。ほれ、特別に胸貸したるわ」
「え…泣きたないし、」
スン、と優雅に拒否すると、北は一瞬ムッとして、
私の腕を強引に掴んで引き寄せた。
反動で、呆気なく北の胸の中におさまった。
「ちょお…離してや」
「アカン。実は泣き虫やから絶対涙出るやろ」
「それどこ情報なん…」
「俺情報や」
「…アテにならへんと思う、ソレ」
この前自覚してしまった感情の手前、
展開にドキドキしてしまう私がおった。
大きくなる心音が聞こえまいかとヒヤヒヤするけれど、
うっすら聞こえる北の心音も、どこか速いような、けれど心地良いような。
「…試合な、すごく、すごく楽しかってん。自分達も、相手も、みんな楽しそうやって。
…そんな試合を出来たことが、それが私の最後の試合だったことが、本当にラッキーやと思うねん」
「…うん」
「…ただ、やっぱり悔しいな、って…思、」
試合が終わった時も、泣いてる後輩を慰めている時も出なかった涙が、ポロリと溢れた。
さっきは我慢出来てたのになあ。
どうしてこの男の前やとこんなに泣いてばっかなんやろうか。
肩を震わせ始めた私の背中を、北はトントン、と優しく叩く。
「…やっぱり泣き虫やな」
「っるさ、いわ…急に、止まらへんもん…」
「ええよ。思う存分泣きや。俺しか見とらんから」
北の温もりが、声が。
私の全身に溶けてゆく。
「…きた、」
「なんや」
「…わたし、頑張っ、た、よな？ちゃんと、主将、やったよな？」
この人の前では、きっと着飾ることは不可能で。
だから、私はどう足掻いても敵わないのだ。
「…前から言うとるやんか。俺が見とるって、証明するって。
…最後まで、ちゃあんと、主将やったで。お疲れさん」
背を叩くリズムが心地よい。
温もりが、声が、心地よい。
「(今日だけ、せめて今だけ、このままがええ…)」
ぎゅ、っと北のジャージを握りしめて、
ただ、優しさに溺れた。
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ミカ(プロフ) - 本当にこの作品を読んでいる時間が最高でした！シリーズの中でこのお話が一番好きだなって思いました。花言葉で心情の変化をを表したりするところ、流石です!!!セリフ一つ一つに深い意味が込められていて素敵でした！あと、私も北信介って名前の響き好きです(笑) (2020年5月25日 21時) (
レス) id: ee1104400e (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - 狐さん» ありがとうございます！語彙力！笑 嬉しいですありがとうございます^ ^ 出来たので是非読んでみてください〜！！ (2020年5月24日 23時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - しぃらさん» ありがとうございます！大丈夫ですか生きてください…！ふいに北さん花絶対似合う、って思ったら調べるのにめちゃ時間かかって後悔したんですけどね(・・;) 影山くんの小説もぜひぜひ！読んでくださいね！ (2020年5月24日 23時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - チベットさん» ありがとうございます！いや小説出すほどのレベルじゃないですまじで笑 実は名前にも意味があるんです、キタキツネの天敵は犬らしいので…^ ^ 影山くんの小説でも探してみてくださいね (2020年5月24日 22時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - 虹華さん» コメントありがとうございます！最後の告白のところは実は書き始めたときからもう決めてました笑 意外とギザな告白好きそうだなって…笑 影山くんの小説もぜひぜひ読んでくださいね^ ^ (2020年5月24日 22時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：はるか
| 作成日時：2020年5月3日 22時
