鮮やかな青と黄色。 ページ29
.
「ワンチッ!!」
「オーライッ!!」
インターハイ3日目。
私達は順当に勝ち進み、準々決勝まできていた。
1対1。最終セット終盤。
20-21。相手チームの1点リード。
集中力は、絶対に切らさない。
リベロが拾ったボールは、
私の頭上に綺麗に上がる。
「ナイスレシーブッ!」
ふわり。
送り出したボールは、エースの元へ。
「(思いっきり打って。私が、導く…道を、開く)」
ドッ、と勢いよく決まるスパイクに、
チームの士気が一気に上がる。
「(北。ちゃんと見とる?私、今…最高に楽しい)」
『お前には無理だ』とバカにして、嘲笑う奴。
『ここまでこれたのはマグレだ』と疑う奴。
ここにいる全ての人間。
見ていろ。
165センチの低身長は、バレーではリベロ以外圧倒的に不利。
そんな常識、私が、覆す。
「(人1)せんぱいッ!!」
高めのトスが上がる。
ずっとずっと、練習していた、スパイク。
十分な助走距離を確保して、
ドン、と。
母指球に重心をおいて、ただ、真上に飛ぶ。
完全に撒いた相手ブロック。開ける、視界。
「(…いい、景色だ)」
.
___初めてバレーが楽しいと思ったのは、レシーブで真っ直ぐボールが飛んだ時。
ブロックが出来た時、スパイクが打てた時。
セッターになってからは、もちろん相手ブロックを欺くことが出来た時。
"苦しい"もあったけど、"楽しい"には勝てんくて。
「(…何で今、こんなことを思い出すんやろうか)」
私の打ったスパイクは、ギリギリアウトやった。
負けるつもりはないのはお互い様。
ピリ、と相手の熱意を肌で感じる。
それが、焦りとなって出てしまったのか。
チッ、と舌打ちをする。
ビビるな。恐るな。
24-22。相手のマッチポイント。
長い、長いラリー。
視界に映るは、鮮やかな青と黄色のみ。
スパイクが、放たれて。
それは、自分に向かって一直線。
スローモーションみたくゆっくりと見えた。
けれど、腕をはじいて。
___コートの、外に落ちた。
ピーッ、と試合終了の笛が、耳をつんざくように鳴って。
ああ、終わってしまったんだ。そう悟った。
涙は、なぜか出なかった。
呆気ない、と心の隅で思っていた。
821人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ミカ(プロフ) - 本当にこの作品を読んでいる時間が最高でした!シリーズの中でこのお話が一番好きだなって思いました。花言葉で心情の変化をを表したりするところ、流石です!!!セリフ一つ一つに深い意味が込められていて素敵でした!あと、私も北信介って名前の響き好きです(笑) (2020年5月25日 21時) (レス) id: ee1104400e (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - 狐さん» ありがとうございます!語彙力!笑 嬉しいですありがとうございます^ ^ 出来たので是非読んでみてください〜!! (2020年5月24日 23時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - しぃらさん» ありがとうございます!大丈夫ですか生きてください…!ふいに北さん花絶対似合う、って思ったら調べるのにめちゃ時間かかって後悔したんですけどね(・・;) 影山くんの小説もぜひぜひ!読んでくださいね! (2020年5月24日 23時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - チベットさん» ありがとうございます!いや小説出すほどのレベルじゃないですまじで笑 実は名前にも意味があるんです、キタキツネの天敵は犬らしいので…^ ^ 影山くんの小説でも探してみてくださいね (2020年5月24日 22時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - 虹華さん» コメントありがとうございます!最後の告白のところは実は書き始めたときからもう決めてました笑 意外とギザな告白好きそうだなって…笑 影山くんの小説もぜひぜひ読んでくださいね^ ^ (2020年5月24日 22時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:はるか | 作成日時:2020年5月3日 22時