これは、紛れもなく。 ページ27
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『何をビビる必要があるんや』
『犬塚は、ちゃあんと、立派な"主将"や』
北の言葉は、私を負の連鎖から引き上げるには十分すぎる言葉やった。
私は北の肩に顔をうずめたまま、くすりと笑う。
頑張れも、応援しとる、もない。
それでも、背中を押されとる実感はある。
すると、グイッと肩を押されて、
少しだけ口角を上げた北が私の頭をぐしゃぐしゃと乱暴に撫でた。
「ちょお、何すんねん!」
「まだ泣いとるんかと思うて」
「いや髪関係あらへんやろ!ああもう…アンタほんまに意味わからん」
「お前も大概やで」
「それこないだも聞きましたァ〜」
ああ、この感じ、好きや。
憎いのに、争いばっかりしとるんに、
どこか、居心地がええんや。
自然と笑みのこぼれる私を見て、北は満足そうに笑う。
「ほれ、もう夜遅いから帰ろ。さっさと着替えや、風邪ひくで」
「はあいママ」
「それやめえや」
「いたっ!?北のデコピンめっちゃ痛い!暴力反対!」
「自業自得や。はよ帰る支度せえ」
「うー…」
冷たく言い放って体育館を出て行った北は、
それでも着替えを終えて部室を出ると、ちゃんとドアの側で待っててくれた。
すっかり暗くなった空を見上げながら、2人並んでゆっくり歩く。
時々見つける花に、足を止めながら。
「…私な、北みたいになりたかったんよ」
「ん?」
「前に、練も侑くんも言うとった。北が後ろにおるとすごく安心する、って。
羨ましかったんや。仲間にそう思われる北が。やから、そんな主将になりたいと思っとった。
けど、どうでも良くなったわ。北が背中を押してくれたから。
私は私の思うがままに楽しむよ」
ニシシ、と笑って拳を差し出せば、
北は少し苦笑いをして、ゆっくり拳を向けた。
「俺は逆にお前が羨ましいわ。侑達と同じで、些細なことにもぶつかって、悩んで。
俺はそんな風になれんから…真っ直ぐにバレーを愛するお前らが、眩しくて、誇らしいと思う。
…やから、お前は純粋にバレーを楽しむんや。心配せんでも楽しむお前に引っ張られて周りは勝手についてくる」
コツリ。
ぶつかった拳と、ニンマリ微笑む北に、
何度目か、胸が締め付けられる感覚がした。
まさか北相手に、と思うたけど、
誤魔化すなんて、もう出来んかった。
「(気のせいやない。これは、)」
__紛れもなく、恋や。
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ミカ(プロフ) - 本当にこの作品を読んでいる時間が最高でした!シリーズの中でこのお話が一番好きだなって思いました。花言葉で心情の変化をを表したりするところ、流石です!!!セリフ一つ一つに深い意味が込められていて素敵でした!あと、私も北信介って名前の響き好きです(笑) (2020年5月25日 21時) (レス) id: ee1104400e (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - 狐さん» ありがとうございます!語彙力!笑 嬉しいですありがとうございます^ ^ 出来たので是非読んでみてください〜!! (2020年5月24日 23時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - しぃらさん» ありがとうございます!大丈夫ですか生きてください…!ふいに北さん花絶対似合う、って思ったら調べるのにめちゃ時間かかって後悔したんですけどね(・・;) 影山くんの小説もぜひぜひ!読んでくださいね! (2020年5月24日 23時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - チベットさん» ありがとうございます!いや小説出すほどのレベルじゃないですまじで笑 実は名前にも意味があるんです、キタキツネの天敵は犬らしいので…^ ^ 影山くんの小説でも探してみてくださいね (2020年5月24日 22時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - 虹華さん» コメントありがとうございます!最後の告白のところは実は書き始めたときからもう決めてました笑 意外とギザな告白好きそうだなって…笑 影山くんの小説もぜひぜひ読んでくださいね^ ^ (2020年5月24日 22時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はるか | 作成日時:2020年5月3日 22時