まるで、上書きするように。 ページ21
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「…え、?」
「いやそんな驚くことちゃうと思いますけど」
「あ〜…やって、恥ずかしいというか何というか…そもそもどんな顔しとるん私…」
「せやなあ…一言で言うなら、」
ホンマにバレー大好きなんやなあ、って感じの顔。
そう無邪気に笑う侑くんに、私は眉をひそめた。
「全っ然分からんし。なんなら侑くんもそういう顔しとるよ」
「自分じゃ分からへんもん〜」
「私やって自分じゃ分からへんもん〜」
「あ!真似しよった!」
うける、と2人小さく笑う。
外の風は生温いのに、どこか清々しいと思った。
「てかセッター高校から始めたって言っとった割にめっちゃ上手いやないですか」
「え、ホンマ?」
「ホンマホンマ。なんや女子のバレー見て凄いって思うたの初めてですわ」
「ほわ…高校No. 1セッター言われとる宮侑くんに褒められとる自分凄いって思うたわ今」
えへへ、ありがとう!と笑えば侑くんは大きな目を更にまん丸にして、
風で少し乱れてしまった私の髪にそっと触れた。
「…アンタそんな風にも笑うんやな」
「え、そんな風ってどんな?」
「なんや無邪気っていうか。いつもそんな風に笑わへんからドキッとしたわ」
するりと髪を撫でる手が頬に降りてきた。
さっきまでの空気がまるで嘘みたいに、侑くんの顔から笑顔が消えた。
絡み合う視線。
侑くんが、なあ。と口を開いて、その先を言おうとした時。
「侑」
初めて聞いた時と同じような、
でも少し違うような、凛とした声が響いた。
「…北さん、」
「何してん、監督呼んどったで」
「あ〜…はい、今戻ります〜」
侑くんの手がするりと離れて、彼はそのまま行ってしまった。
少し熱い頬に手の甲を当てて冷ましながら、
侑くんは何言いたかったんやろ…と思った。
刹那。
侑くんと一緒に行ったと思っていた北が足音もなく近づいてきて、
「っわ、き、た!?」
「…侑と、何の話しとった?」
侑くんが触れたところと同じところをなぞるように。
まるで、上書きするように。
髪から頬へ、北の少し冷たい手が触れた。
パチリ、と視線が絡まって、
何故だろう、
侑くんと全く同じ状況であるのに。
「…なあ、」
「っ…」
あの時と同じように。
ギュッと、胸が締め付けられる感覚におそわれた。
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ミカ(プロフ) - 本当にこの作品を読んでいる時間が最高でした!シリーズの中でこのお話が一番好きだなって思いました。花言葉で心情の変化をを表したりするところ、流石です!!!セリフ一つ一つに深い意味が込められていて素敵でした!あと、私も北信介って名前の響き好きです(笑) (2020年5月25日 21時) (レス) id: ee1104400e (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - 狐さん» ありがとうございます!語彙力!笑 嬉しいですありがとうございます^ ^ 出来たので是非読んでみてください〜!! (2020年5月24日 23時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - しぃらさん» ありがとうございます!大丈夫ですか生きてください…!ふいに北さん花絶対似合う、って思ったら調べるのにめちゃ時間かかって後悔したんですけどね(・・;) 影山くんの小説もぜひぜひ!読んでくださいね! (2020年5月24日 23時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - チベットさん» ありがとうございます!いや小説出すほどのレベルじゃないですまじで笑 実は名前にも意味があるんです、キタキツネの天敵は犬らしいので…^ ^ 影山くんの小説でも探してみてくださいね (2020年5月24日 22時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - 虹華さん» コメントありがとうございます!最後の告白のところは実は書き始めたときからもう決めてました笑 意外とギザな告白好きそうだなって…笑 影山くんの小説もぜひぜひ読んでくださいね^ ^ (2020年5月24日 22時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はるか | 作成日時:2020年5月3日 22時