背を駆け抜ける何か。 ページ16
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北side
試合終了のホイッスルが鳴る。
インターハイ予選の決勝。
俺ら稲荷崎は、難なく勝ちを掴んだ。
「何や大したことなかったな〜。もっと強い思うてたんやけど」
「ホームラン2本もかました奴が何偉そうに言うてんねん」
「あ?サムこそスパイク全然決まっとらんだやんか」
「何やと?やんのかオラ」
「上等やコラ」
「ちょっと双子うるさいんですけど〜」
…ほぼバケモンじみたこいつらのおかげやけどな。
利き手を怪我して調子の悪いアランに代わって途中から試合に出ていた俺は、汗まみれのユニフォームをすぐに脱いだ。
「あ、女子もう始まってるらしいよ」
「えっそうなん?サム、観に行こうや」
「おん…そういえば女子の試合ってあんま見たことなかったなあ」
「(人1)サン出てるやんな!行こ!」
最近犬塚とやたら仲の良い侑達が着替えも疎かに観客席に向かって走っていった。
はあ、とため息をつけば横で練が「信介も観に行かんくてええんか」と聞いてきた。
「まあどうせまだ帰れんしな。犬塚出とるし応援したろうか」
「なら行こうや。今日最後の試合やからギャラリー集中しとるで」
「おん」
ジャージを上に羽織って侑達の後を追う。
追いついてみんなの横に並べば、
「(おった、)」
第一セット、20-16。
稲荷崎がリードしていた。
犬塚は今からサーブを打つようで、
ボール片手にサービスゾーンへと歩いていた。
…なんや、
「えらいいつもと顔つきちゃうな、犬塚」
「信介、(人1)の試合観るん初めてか?」
「いや、2年の最初ぐらいに1回観たんやけど…なんやあの頃と雰囲気全然ちゃうな」
それは、いつもの犬塚を知っている俺が、微かに驚くほど。
相手コートを見つめる犬塚の目は、
冷酷なのに、どこか熱が篭っとって。
「…あんな顔の(人1)サン、初めてみたわ」
「…おん」
あまりのヒリつきに、
観客である俺らが圧倒されるほど。
狙いを定めた犬塚が、渇いているであろう唇をぺろり、と一舐めする。
ぞくり。
何かが、背を駆け抜けた。
ピッ、と笛が鳴り、
犬塚は地面に3回ボールを叩きつけ、
高く上がったサーブトスに自分の全体重を乗せるかのように、ドオッ、と勢いよく放たれたサーブは。
「…!」
「オッホ…!」
相手の手に触れることなく、
コートの端に落ちた。
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ミカ(プロフ) - 本当にこの作品を読んでいる時間が最高でした!シリーズの中でこのお話が一番好きだなって思いました。花言葉で心情の変化をを表したりするところ、流石です!!!セリフ一つ一つに深い意味が込められていて素敵でした!あと、私も北信介って名前の響き好きです(笑) (2020年5月25日 21時) (レス) id: ee1104400e (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - 狐さん» ありがとうございます!語彙力!笑 嬉しいですありがとうございます^ ^ 出来たので是非読んでみてください〜!! (2020年5月24日 23時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - しぃらさん» ありがとうございます!大丈夫ですか生きてください…!ふいに北さん花絶対似合う、って思ったら調べるのにめちゃ時間かかって後悔したんですけどね(・・;) 影山くんの小説もぜひぜひ!読んでくださいね! (2020年5月24日 23時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - チベットさん» ありがとうございます!いや小説出すほどのレベルじゃないですまじで笑 実は名前にも意味があるんです、キタキツネの天敵は犬らしいので…^ ^ 影山くんの小説でも探してみてくださいね (2020年5月24日 22時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - 虹華さん» コメントありがとうございます!最後の告白のところは実は書き始めたときからもう決めてました笑 意外とギザな告白好きそうだなって…笑 影山くんの小説もぜひぜひ読んでくださいね^ ^ (2020年5月24日 22時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はるか | 作成日時:2020年5月3日 22時