思考をクリアに。 ページ15
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「(人1)、男子の試合観ないの」
「集中出来んくなるから観ないの〜」
「北くん出とるよ今」
「尚更観いひんわ」
6月。インターハイ予選が始まった。
稲荷崎高校は、男女ともに決勝まで進出が決まり、
男子は今その決勝を戦っている。
私達女子の決勝は時間がずらされており、もう少し後。
私は与えられた稲荷崎のスペースに座り、爪を整えていた。
「…なあ、さきちゃん」
「ん?」
「もし勝てへんかったら、春高まで残る?」
高い、高い壁は、いつだって目の前に現れて、
私達はいつもそれを乗り越えられない。
今回だってそうかもしれない。
少し弱気がちな私に、さきちゃんはため息をついた。
「せやなあ、負けたら残るわ。(人1)は?」
「…私は、ホンマは残りたいけど、負けてもインハイまでやって決めとる。
2年生結構逸材多いからな、引導渡してやんねん」
「知っとる。アンタそういう子やもんな」
「ふはっ、さきちゃん私のこと知りすぎやない?ファンなんやな」
その時、ワアッと会場が盛り上がった。
廊下にいた私達はその歓声にひかれるように2階席からコートをのぞいた。
「…あ、男子勝ったんや」
「え、結構強いとこって言われとったんにな。ストレート勝ちやん」
「男子はやっぱさすがに強いなあ」
「せやな…あ、ちょお(人1)、どこ行くん」
「…心落ち着かせてくるわ。10分後には戻るからちょお1人にして」
さきちゃんにそう言うと、
あーいつものやつな。はいはい、と手をヒラヒラと振ってどこかへ行ってしまった。
私も、反対方向へと歩き出す。
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「( ふうっ…)」
人気のない場所、静かな空間。
腰掛けて、目を閉じる。
集中力の切れやすい私は、
こうして試合のたびに、まるでルーティーンみたいに何も考えずに目を閉じていた。
何も考えない。
ただ、ひたすらに思考をクリアにするだけ。
ひとつ、残すのは、試合のイメージだけ。
「…よし、」
肩をぐるりとひとつ回して、私は立ち上がり歩き出した。
.
「…時間ぴったりやな、待っとったで、(人1)」
「…おん。なら行こうか」
ひらり。ジャージをなびかせて、
私達はコートへ向かう扉を思いっきり開けた。
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ミカ(プロフ) - 本当にこの作品を読んでいる時間が最高でした!シリーズの中でこのお話が一番好きだなって思いました。花言葉で心情の変化をを表したりするところ、流石です!!!セリフ一つ一つに深い意味が込められていて素敵でした!あと、私も北信介って名前の響き好きです(笑) (2020年5月25日 21時) (レス) id: ee1104400e (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - 狐さん» ありがとうございます!語彙力!笑 嬉しいですありがとうございます^ ^ 出来たので是非読んでみてください〜!! (2020年5月24日 23時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - しぃらさん» ありがとうございます!大丈夫ですか生きてください…!ふいに北さん花絶対似合う、って思ったら調べるのにめちゃ時間かかって後悔したんですけどね(・・;) 影山くんの小説もぜひぜひ!読んでくださいね! (2020年5月24日 23時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - チベットさん» ありがとうございます!いや小説出すほどのレベルじゃないですまじで笑 実は名前にも意味があるんです、キタキツネの天敵は犬らしいので…^ ^ 影山くんの小説でも探してみてくださいね (2020年5月24日 22時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - 虹華さん» コメントありがとうございます!最後の告白のところは実は書き始めたときからもう決めてました笑 意外とギザな告白好きそうだなって…笑 影山くんの小説もぜひぜひ読んでくださいね^ ^ (2020年5月24日 22時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はるか | 作成日時:2020年5月3日 22時