ユリとカスミソウ。 ページ12
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「お。犬塚、見てみい。ピンクのユリ咲いとる。綺麗やなぁ」
「…なあ、1個聞いてええ?」
「おん。なんや」
「なんでアンタそんな普通なん」
夜の7時過ぎ。
なぜか私は街灯がチラホラとある夜道を北と歩いとった。
ユリを見ていた北がきょとん、とした顔でこちらを向く。
「普通…とは?」
「あれ?アンタ私のこと嫌いよな?」
「せやなあ…嫌いとまではいかへんけど」
「けど?」
「口に豆腐突っ込んだろうかなあ、と思うくらいにはムカついとる」
「それもう嫌いやんか」
北がそんな感情抱くとか結構珍しいんちゃうか、とまるで他人事のように笑えば、
なにわろとんねん、とジトリと睨まれた。こっわ…
「いや、やから私のこと嫌いなんに何で送ってくとか言うたん?
普通、嫌いな人と一緒に帰るなんて有り得へんやろ」
「そら確かに有り得へんかもしれんけどな、こんな暗い中女1人で帰らすわけにはいかんやろ」
「学校から結構近いし大丈夫なんに」
「それでもや。今のご時世どこで何あるか分からへんしな」
「…でも、」
それでもなお納得しようとしない私の口に、
そっと北の人差し指が触れる。
突然のことにビックリして固まる私に、
北は小さく笑った。
「好きも嫌いもあらへん。俺が送るって言うたら送るんや。
やからお前はごちゃごちゃ言わんと素直に俺に送られとけばええねん。
お前が嫌なら無理して隣歩かんでもええし。
…まだ何か言葉必要か?」
なんて格好いいんだと、
ずるい人だと、
北の真っ直ぐすぎる目を見て思った。
そんな風に言われたら、
「(嫌だなんて、言えへんやんか)」
「…分かったわ。もう何も言わへんし、言葉もいらん」
「ならええわ。お、見てみい、今度はカスミソウも咲いとるで」
「…北って花詳しいんやな、目キラキラしとるで」
「ばあちゃんに教えてもろてん」
いつもの帰り道。
昨日も通ったはずなのに、こんなに花が溢れているなんて気づかなかった。
「(…弱みはまだ握れとらんけど、こんな表情の北も珍しいなあ)」
「なあ、今更やけど家分かるん?」
「ホンマに今更やな…分からんけど」
「あ!?かっこいい事言いよったくせに!どつくぞ!」
「どついとる暇あったら道案内せえや」
なぜか、嫌じゃなかった。
どこか心地よさを感じて、私は少し前を歩く北の隣に並んだ。
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ミカ(プロフ) - 本当にこの作品を読んでいる時間が最高でした!シリーズの中でこのお話が一番好きだなって思いました。花言葉で心情の変化をを表したりするところ、流石です!!!セリフ一つ一つに深い意味が込められていて素敵でした!あと、私も北信介って名前の響き好きです(笑) (2020年5月25日 21時) (レス) id: ee1104400e (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - 狐さん» ありがとうございます!語彙力!笑 嬉しいですありがとうございます^ ^ 出来たので是非読んでみてください〜!! (2020年5月24日 23時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - しぃらさん» ありがとうございます!大丈夫ですか生きてください…!ふいに北さん花絶対似合う、って思ったら調べるのにめちゃ時間かかって後悔したんですけどね(・・;) 影山くんの小説もぜひぜひ!読んでくださいね! (2020年5月24日 23時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - チベットさん» ありがとうございます!いや小説出すほどのレベルじゃないですまじで笑 実は名前にも意味があるんです、キタキツネの天敵は犬らしいので…^ ^ 影山くんの小説でも探してみてくださいね (2020年5月24日 22時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - 虹華さん» コメントありがとうございます!最後の告白のところは実は書き始めたときからもう決めてました笑 意外とギザな告白好きそうだなって…笑 影山くんの小説もぜひぜひ読んでくださいね^ ^ (2020年5月24日 22時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はるか | 作成日時:2020年5月3日 22時