今だけはその手で。 ページ23
.
「……大丈夫？」
「……」
「まあ、無理があるよね」
男の人たちがいなくなったと分かった途端、
全身の力がぬけて尻餅をついてしまう。
ぽろぽろと涙も地面に落ちていく。
「(でも、自業自得だ)」
危ないと、
待っていればいいと言われていた。
危険な目に遭うはずないと、過信していた。
こわかった。
ただのナンパじゃない、
なにをされるか分からない恐怖。
「(思い出しただけで、また…)」
カタカタと震える私の身体。
「…ごめん」
「！」
「嫌だったら突き飛ばしていいから」
震える身体を、赤葦が優しく包み込む。
まるで壊れ物を扱うように。
「…大丈夫そう？」
「へいき…」
「ん。よかった…」
赤葦はそのまま、私の手もぎゅっと包み込んだ。
同年代の男子と比べても大きい手で。
でもほんとうにそれだけで、恐怖が少し和らぐような感じがするから不思議だ。
「…早く見つけてあげれなくてごめん」
「…ずっと、私を探してくれてたの？」
「うん。(人1)なら大丈夫かなって思ってたけど…
助けて、って、聞こえた気がして」
ああ。
ちゃんと、ちゃんと赤葦には届いてたんだ。
よかった。
あのとき、力を振り絞っていてよかった。
「ありがと、赤葦…ごめんね、先輩達に、赤葦と帰れって…待ってろ、って、言われたのに…」
「ほんとだよ…絡まれてる(人1)見たときどれだけ焦ったか」
「ちょ、赤葦っ！イタイ鼻つままないで…」
「ぷっ…ブサイクな顔」
「やめてよ、もう…」
「あーほんと良かった…」
そっと、まだ目尻に残る涙を赤葦が拭ってくれた。
いつも通りの顔に戻ってる。
赤葦にそう言われて気づいた。
いつの間にか震えもなくなっていたし、
ちゃんと身体に力も入るようになってきた。
「とりあえず、警察には行こう。あと、親と学校にも連絡しないと」
「うん、そうする…あの、」
「なに」
「あの、今だけでいい、から…
手、握っててほしい…」
「…………」
きっと後にも先にもこんなこと絶対言わない。
でも今だけは。
安心する、その大きな手で、
私の手を包んでいてほしい。
「今日の赤葦さんは優しいからいいよ」
「いつもそうだといいのに」
「辛子和え食べれるようになったら考えてもいいよ」
「永遠にないじゃん」
＊どさくさに紛れて夢主を名前で呼ぶちゃっかり葦
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 458人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
桜(プロフ) - ごめんなさいちょっと尊い… (2022年4月7日 7時) (
レス) @page8 id: 7d2166206e (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - 泣きました！本当にこのお話好きです...！赤葦最高ですっ...赤葦万歳...お疲れ様でした！ (2021年2月28日 8時) (レス) id: ebdd1925d4 (このIDを非表示/違反報告)
ピ(プロフ) - 赤葦推しの私死亡、、、 (2021年1月5日 16時) (レス) id: 324728c5bd (このIDを非表示/違反報告)
杏仁豆腐 - よしこういう時は円周率だ、からめっちゃ吹きました！頑張ってください！！ (2020年7月4日 9時) (レス) id: d74ccecfb0 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - vさん» お返事遅くなりすみません（泣）コメントありがとうございます！そう言ってもらえてとっても嬉しいです！これからもよろしくお願いします！！ (2020年3月6日 0時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：はるか
| 作成日時：2020年2月16日 19時
