その捌 ページ15
「一体なぜだぁーー！！！」
兄が教会の机をバンッと叩いた。
自分の予想に反して、徳川くんまで助けると宣言した信長が気に入らないらしい。
「奴らは家康を憎んでいたのではないのか？訳がわからない…。叩き潰す。今すぐ準備しろ！！！」
兄の命令でペリーさんと始皇帝さんが教会を出て行く。
ジャンヌさんはタブレットを片手に教会の奥へ行った。
立ち上がってそれらを見ていたみやちゃんが、私の隣に腰掛けた。
「信長くんたちを、信じましょう。…家康くん？」
徳川くんは、人が変わったみたいだった。
何も喋らず、抵抗すらもせず、ただ柱に括り付けられたままじっと下を向いている。
「Aちゃん…体調は如何ですか？」
『、まだ大丈夫。ありがとう』
「きっと、すぐに信長くんがいらっしゃいます。もう少しの辛抱です」
みやちゃんが縛られた手を器用に使って、私の手を握ってくれた。
指先に力を込めて、ゆっくりと目を瞑った。
が、熱のせいか、眠ることはできなかった。
思い出されるのは、兄との思い出。
兄はいつだって私の味方だった。
両親の記憶がない私に、アルバムを捲りながら思い出を語ってくれた兄。
母が家を出たのは私のせいでもあるのに、一度も私に怒らなかった。
祖父が倒れたとき、祖母が危篤になったとき、何かあれば兄とこの教会で祈った。
二人のお葬式をしたのもここだ。
兄は、私の前では決して泣かなかった。
兄が居てくれるおかげで、私は寂しい思いをせずに済んだ。
そんな兄を、私が一人にしてしまった。
もしあのとき、もっと兄と話し合っていれば。
黙って家出なんてしなければ。
兄は、徳川くんを許してくれていただろうか。
今だって銀杏高校に入学したことは間違いじゃないと思っているけれど、兄とのことは少し後悔している。
目を開けると、十字架が見えた。
やがて、ジャンヌさんとの会議が終わったのか、兄が戻ってきた。
「A、立て。あなたも」
『何、』
信長たちとの戦いに備えているのか、黒百合高校の生徒たちによって教会の椅子が端に寄せられていく。
数脚だけが残されたそこは、広いスペースができていた。
正面の、牧師さん用の椅子に兄が座る。
私とみやちゃんも徳川くんの側、一番前の椅子に座らされた。
ジャンヌさんが寄ってきて、手を拘束しているロープを柱に括り付けた。
『お兄ちゃん…？』
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 502人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
美優(プロフ) - 有紀さん» 初めまして！コメントありがとうございます☺️私も最近続きを書きたい欲が出てきました！気長にお待ちいただければ嬉しいです！ (4月14日 14時) (
レス) @page31 id: c086026ca6 (このIDを非表示/違反報告)
有紀(プロフ) - 初めまして、このドラマが好きで読ませていただきました。続き楽しみにしてます。 (3月29日 18時) (レス) id: 1322499c70 (このIDを非表示/違反報告)
美優(プロフ) - ななさん» お久しぶりです！嬉しいです✨ (3月22日 15時) (レス) id: c086026ca6 (このIDを非表示/違反報告)
なな - TVerで配信開始されたので懐かしくなりまた読みにきちゃいました。 (3月6日 23時) (レス) id: 114e35bcaa (このIDを非表示/違反報告)
美優(プロフ) - らんさん» ありがとうございます！最近は更新できていませんが、読んでくださる方がいると思うと嬉しいです😊 (2023年4月15日 18時) (レス) id: c086026ca6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆう | 作成日時：2022年8月30日 10時
