検索窓
今日:1 hit、昨日:16 hit、合計:157,327 hit

ページ44

そんなときに、もしやられてしまったら?

それならいっそ、さっさと私が倒されて、今日一日が終わればいいのでは。


「Aちゃん…」

「それ以上言うなら怒るぞ」

『でも』

「それこそ和の心に反するだろ」

「そんなんで家康に勝てても嬉しくないよ?」

『みんな…!』


誰一人、私が足手まといだと思っている人はいなかった。

みんなを見回すと、それぞれが笑みを返してくれる。

信長に頭をポンと叩かれた。


「そういうことだ。行くぞ」


今度こそ教室を出て行くみんなについて、私も最後に教室を出た。

信長に、しっかり手を握られている。

先頭を歩いているみやちゃんと上杉くんが入ったのは、体育倉庫だった。

みんなが柔道用のマットやカートに腰掛ける中、伊達くんが一人、2階から私たちを見下ろしている。


「ここなら大丈夫だろ」

「ああ、絶対見つかりづらい」

「伏せろーっ!!!」


と、突然井伊くんが叫んだ。

咄嗟にマットから降りてしゃがみ込む。

同じタイミングで、誰かが覆いかぶさってきた。


『信長、』

「大丈夫か」

『…ありがとう』


信長は案外すぐに離れていったので辺りを見ると、私の真横に矢が刺さっていた。

もし信長が庇ってくれなかったら。

あの矢があと数センチずれていたら。

肝が冷えた。

何より、信長に矢が当たらなくてよかった。

信長が、矢に括り付けられている紙を外す。


「矢文とな」


紙を開いて文字を読んだ信長が動きを止めた。


「どうされました?…逃げても無駄だ。裏切り者を通じて、すべて筒抜け」

「バレてる?」


相手がどこに潜んでいるのか、キョロキョロと視線を巡らせる。


「敵だ!」


伊達くんが顎をしゃくった方を見ると、またジャージの生徒たちが入ってきていた。


「なんだおめえら!」

「「「しゃあーーっ!!!」」」


今回は他言無用。

すぐに向かってくる。


「退けーっ!」


が、すぐにみんなにやられて逃げていった。


「なんだあいつら」


本当に戦う気があったのか、いとも簡単に退いていった生徒たちに、みんなも不思議そうだ。

そこに、例のブザーの音が鳴り響く。


『また?』


《そこまでです。この旗印戦、家康くんの勝利とします》


「「「は?」」」

「また家康の勝ち?ということは、」

『秀吉くんがいない!』

「秀吉!」


数段積まれたマットの影で、もたれるようにして倒れている秀吉くんがいた。

.→←.



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (137 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
613人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

美優(プロフ) - A?さん» コメントありがとうございます!前田くんと絡めるように頑張ります! (2022年8月26日 10時) (レス) id: c086026ca6 (このIDを非表示/違反報告)
A? - 凄く面白いです前田との絡みが欲しいです (2022年8月25日 15時) (レス) @page35 id: 463b37ca19 (このIDを非表示/違反報告)
涼杜兄妹(プロフ) - いつも楽しく拝読しております!秀吉ともっと絡ませてほしいです!!! (2022年8月25日 14時) (レス) @page35 id: a89c13a921 (このIDを非表示/違反報告)
美優(プロフ) - すずさん» ありがとうございます! (2022年8月23日 19時) (レス) id: c086026ca6 (このIDを非表示/違反報告)
すず(プロフ) - 応援してます!! (2022年8月19日 18時) (レス) @page13 id: c8c40d0f19 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ゆう | 作成日時:2022年8月10日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。