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神社に着くと、信長は椅子を広げ始めた。
『今日は何食べるの?』
「まあ見てろ」
『うわぁすごいね!どこで買ってきたの?』
信長が網に乗せたのは、大きな鮪の塊だった。
七輪で何かを焼いている間、私たちに無言の時間が流れるのはいつものこと。
信長はこういうときによく考え事をしているから、私も必要以上に話しかけないように気をつけていた。
とはいえ、気まずくはないのが不思議だ。
「俺が、…大将」
『そんなに重く考えなくて大丈夫だよ。信長には、大将になるだけの器がある』
「なぜそう思う」
『思うって言うよりは、…信じてる?ずっと一緒にいるしね』
「ふっ、なんだその自信は」
ちょっと笑ってくれた信長に安堵した。
段々と恥ずかしくなってきて、ひっくり返すのも扇ぐのもやってくれていた信長から扇子を拝借した。
「信長くん、Aちゃん」
そこに、みやちゃんがやってくる。
「みやび」
「それは、…」
「鮪だ」
「鮪ですか!あっ、知ってました?鮪って、泳ぎ続けないと呼吸が止まって死んでしまうそうです」
「そうなのか」
「ずっと干し柿食べてる信長くんみたいですね」
「俺は鮪ではない」
「あはは、冗談でございます!」
今日のみやちゃんはやけによく喋る。
「そうか…」
みやちゃんも、信長を励まそうとしているようだった。
「あっ、鮪と言えばもう一つ。鮪のトロって昔ゴミとして捨てられてたんですって。それが今や高級品、トロ自身も自分にそんな価値があるなんて気づかなかったんでしょうねー」
『自分で自分の才能には気付けないもの』
「そうです。だから、私が言います。信長くん、あなたはきっと大将の器です!」
『ほらね』
「貴様もAと同じことを言うのだな」
「そうなのですか?なんだか恥ずかしいですわ。さっ、早く鮪食べましょう」
『焼きすぎると、まっくろになっちゃうわよ』
「、うつけが」
『いて』
信長の真似をして駄洒落を言うと、額を小突かれた。
『そんなことするならみやちゃんと二人で全部食べちゃおーっと』
ふざけて信長の持っていたトングを手にする。
「おい、」
「あはは、Aちゃんでもそんなことするのですね」
『みやちゃんは私をなんだと思ってるの?…あっ、』
隣で爆笑するみやちゃんに気を取られた隙に、トングを奪い返された。
ついでに扇子を持った手を掴まれる。
「風が疎かになっているぞ」
『どうもすいませんね』
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美優(プロフ) - A?さん» コメントありがとうございます!前田くんと絡めるように頑張ります! (2022年8月26日 10時) (レス) id: c086026ca6 (このIDを非表示/違反報告)
A? - 凄く面白いです前田との絡みが欲しいです (2022年8月25日 15時) (レス) @page35 id: 463b37ca19 (このIDを非表示/違反報告)
涼杜兄妹(プロフ) - いつも楽しく拝読しております!秀吉ともっと絡ませてほしいです!!! (2022年8月25日 14時) (レス) @page35 id: a89c13a921 (このIDを非表示/違反報告)
美優(プロフ) - すずさん» ありがとうございます! (2022年8月23日 19時) (レス) id: c086026ca6 (このIDを非表示/違反報告)
すず(プロフ) - 応援してます!! (2022年8月19日 18時) (レス) @page13 id: c8c40d0f19 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆう | 作成日時:2022年8月10日 0時