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『アメリカンドッグ買って来たよ。2人とも何も食べてないでしょ?みんなで食べよ』
信長は夢で見た自習室の机に座り、私もその前の椅子に座った。
机に座ったら行儀悪いよ、と言ったら私まで机に引っ張られて「これで同罪だな」と笑われた。
「信長くん、蝶野さん、僕のために、ありがとう」
そんな私たちに、明智くんがお礼を言ってきた。
「明智、」
「何」
「平和を望む貴様がなぜこの学校にやってきた?貴様には戦が似合わん」
扇子を弄ぶ信長に、明智くんは微笑んだ。
「だよね。…中学のときはさ、ギャングチームのパシリやってて、喧嘩も弱く、秀吉くんみたいに頭も切れない。人の顔色ばっかり伺って」
中学生の明智くんは、パシられていた相手に「プライドがない」「寄生虫だ」と馬鹿にされていたらしい。
「でも僕、不良と呼ばれる人たちが、大好きなんだよね。世間からは、落ちこぼれで暴力的だと思われてるけど、実は、とっても純粋な人たちだよね。…憧れるんだ、信長くんにも。自分に正直な人だよね。蝶野さんが惹かれるのもわかる」
『いや、惹かれるって…』
窓の外を眺めていた明智くんが、椅子を引いて目の前に座る。
「羨ましいよ」
「…羨ましいなら貴様も正直に生きれば良い」
「…そうだね」
「それだけの話だ」
「じゃあ、正直に言うね」
信長の言葉に少し考えた明智くんが口を開く。
「…おう」
突然の告白に信長も戸惑っているようだ。
「僕さ…干し柿苦手なんだよね」
『え』
「あんなうまいものが?」
さっきまで穏やかな表情を浮かべていたはずの信長が、目をまんまるにして明智くんを見ている。
今日明智くん、信長から干し柿もらってたよね?
「ごめんね」
「ではこれを食え」
「、ありがとう」
すぐに切り替えたらしい信長が、私の持ってきた紙袋からアメリカンドッグを取り出して明智くんに渡した。
「ケチャップもたっぷりとかけろ」
「あ、ケチャップは苦手なんだ」
「『え?』」
そのままケチャップをかけてあげようとした信長の動きが止まった。
「んー、僕Americanドッグ大好きなんだ。蝶野さん、ありがとう」
美味しそうにアメリカンドッグを頬張る明智くん。
アメリカンだけ発音良く言うのやめれる?
「返せ」
「ん!」
「貴様にはやらん!」
「なんで!?」
「ふざけるな返せ!」
「僕のアメリカンドッグ!」
こうして穏やかな夜が更けていった。
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美優(プロフ) - 紗奈さん» コメントありがとうございます!私も嬉しいです!! (2022年8月15日 19時) (レス) id: c086026ca6 (このIDを非表示/違反報告)
紗奈 - 私このドラマシリーズ好きなので嬉しいです! (2022年8月15日 18時) (レス) @page6 id: 2c45cd1730 (このIDを非表示/違反報告)
美優(プロフ) - すずやまさん» そのお言葉が一番嬉しいです!ありがとうございます🥰 (2022年8月9日 2時) (レス) id: c086026ca6 (このIDを非表示/違反報告)
すずやま(プロフ) - 更新楽しみに待ってました!☺️これからも作成頑張ってください! (2022年8月8日 18時) (レス) @page37 id: 50da26ed0a (このIDを非表示/違反報告)
美優(プロフ) - 寧々さん» わざわざありがとうございます!全然迷惑じゃないですよー!! (2022年8月5日 16時) (レス) id: c086026ca6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆう | 作成日時:2022年7月25日 9時