2人の悪魔と過ごす日々 (ページ20)

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不安【ジャックハート】ページ20

【ノアSide】

「ねぇ、ノア。僕たちってハロウィンが終わったら元の姿に戻るのかな？」

キッチンにて皆さんのおやつとなるクッキーを焼いていると背後からジャックさんが現れ、こてんと私の肩に頭を擦り付けてきた。

『…どうしたんですか？急に』
「敬語やだ。…さっき、ダルと話しててふと思ったんだ。僕たちはハロウィンが終わったらどうなるんだろうって。」

なるほど、それで少し寂しくなってしまったということか。
もともと会うはずのなかった者達、たまたま人間界でリクルートすることになって、たまたま自分たちが選ばれただけの偶然だからね。

『名残惜しくなっちゃったんだね。』

仲間という存在ができて、親友といわれる存在ができて、彼は心に宿った暖かさを手放すのが嫌なのだろう。
ワンダーランドに戻れば独りでまた仕事に追われる日々に戻るのだから。

上手い元気の出させ方なんて、わからないからとりあえずぎこちなくだけどジャックさんの頭をポンポンと優しく叩く。
しばらくそうしていたが、急にバットと離れ、

「なんてね！エンターテイナーな僕がそんなこと気にしちゃだめだよね！」

にこっと笑っているが、どう見ても空元気。
この人絶対他人に弱っているところ見せないタイプだなと思いながら、クッキーを焼く手をとめ、ジャックさんに向き直り、パンっとジャックさんの頬を両手で挟む。
挟まれた本人はきょとんとしている。

『無理矢理作った笑顔で人を楽しませるなんてエンターテイナー失格。自分の心を無視して他人を喜ばせるなんて無理な話だよ。』
「…っ。」

私がそういうと彼はクシャっと顔をゆがませた。

『人としての体になって、できることが増えて、いろんな人と話せて…仲間もできてってなったら誰だってそれを手放したくないって思うよ。それが感情ってものだから』
「でも、僕はヴィランだ。手下としてそんな欲だがでるのはおかしいじゃないか。」
『ヴィランなんだから欲があって当然だし、逆に貪欲に求めてこそのヴィランでしょ』

私がニッと笑うと彼は伏せていた目を私に向けた。
真っ赤な目が不安げに揺れている。
彼はアリスという少女の夢からできた存在。存在が不安定だから精神も揺るぎやすいのかもしれない…。