仕事 ページ2
このホテルに来て、どれくらいたっただろうか。
いつものようにお気に入りのポップコーンを食べながら下にいる人々を見る。
『平和ねぇ…。』
タワーに入る人々の列、聞こえる悲鳴、楽しそうな声、すべていつも通りである。
｢ノア｣
ふと名前を呼ばれ、振り返るといつの間にそこにいたのか、ルイがいた。
『何？』
｢シリキが呼んでる｣
ルイの言葉にため息が出た。
シリキ・ウトゥンドゥ。このホテルを支配している呪われた像である。
私とルイは、このホテルの部屋に人間が入り込まないようにすることや、いわくつきのモノの管理を任されている。
シリキが呼んでいるということは、何か仕事を頼まれるということを指している。
めんどくさい仕事でなければいいのだが…
そう思い、ルイと一緒にシリキのいるところへ行くべく重い腰を上げた。
***
『お呼びですか？』
いちよ雇い主なため、敬語で話しながら扉を開ける。
部屋に入ると、暗闇から緑の瞳が光った。
その瞬間、脳内に声が響く。
【今日から約2カ月、12人の男女がこのホテルに滞在する。その間、その者たちの世話を頼むぞ】
｢2か月…ちょうどハロウィンまでですか｣
【うむ。これは、チェルナ・ボーグ殿からの仕事だと思え。今から1時間後にミスターVという男とその助手が来る。詳しいことはそいつらに聞くといい。チェルナ・ボーグ殿からの仕事については後ろの机に手紙に書いている。】
それだけ言うと、不気味な笑い声を響かせて、シリキの像は消えた。
『めんどくさ…』
｢まぁまぁ。｣
私がぼやくとルイが慰めるように頭を撫でてくれた。
｢マスターからの手紙なんて久しぶりだな。｣
『思い出した頃にちょくちょく連絡が来るよね･･･マスターなんて？』
｢んー。どうやら今回のハロウィンはヴィランズが主役となり開催するらしい。で、俺達の仕事はシリキの言っていたその手下の世話ってのと、もう一つ。マスターヴィランズに手下の働きを報告することだってよ。｣
マスターヴィランズといえばなかなかな性格をお持ちの人が多い。
とってもめんどくさそうなお仕事を承ったものだ。
｢まぁやったことのない仕事は楽しみだな。｣
心なしか嬉しそうに言うルイ。
『掃除しないといけないね』
｢あぁ。今から1時間弱じゃできない…よな。｣
私がちらりと横を見ると、ルイも同じことを考えていたらしくニヤリと笑った。
｢『魔法使いますか』｣
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作者名：二ア | 作成日時：2018年11月12日 17時
