熟れた果実 ページ43
その晩、アドムはAに自分の部屋に来るように命令された。彼の頭の中は真っ白だった。いや、色んなことが頭の中を駆け巡り、思考回路が複雑に絡み合い、混沌としていた。
結婚…………
その二文字が彼の上にのしかかる。こんなに憂鬱な気持ちになるのははじめてで、何がなんだか分からなかった。なんだかよく分からない感情がふつふつと沸いてくるのを彼は感じていた。
「失礼します。」
部屋に入ると、彼女は薄暗い部屋でランプの明かりを頼りに本を読んでいた。彼女は、アドムの顔をちらりとみると、向かいの席に腰をおろすように言った。微笑みも、何もない空虚な瞳で。月光に照らされたその姿は冷酷で美しかった。
彼は嫌な予感がした。
彼が腰をおろすと彼女は口を開いた。
「ねぇ、アドム。…あなたに話があるの。」
「何だよ。早くはなせよ。」
「夕食の時のこと、覚えてる?」
「………あぁ。」
「手短に言うわ。……この関係を終わりにしましょう。」
「……………………は?」
覚悟してた。分かってた。だけど、実際に言われると息が苦しくなる。心臓は嫌に早く脈を打ち、血液は熱く流れ体内を巡り、背中には冷たい汗が流れた。自分が、自分の心が片手で握りつぶされるような苦しさが彼を襲った。彼は反射的に返していた。
「………は?なんで?」
そう言った彼の声はかすれていた。
「私は、アーサー様と婚約するの。アーサー様の為なの…。」
「………嫌だ。」
「…主人の命令よ。」
「……………。」
アドムは真っ直ぐに彼女の顔を見ることができなかった。今、彼女の顔を見ればそれこそどうにかなってしまいそうだった。
「…………彼奴のこと好きなのか?」
Aは静かに首を振った。
「っっ!じゃぁ、なんで!?」
がたっ!とアドムは立ち上がった。なんで自分がここまで彼女に執着してしまうのか、なんで自分が彼女とこの関係を続けたいと思っているのか…。分からなかった。
「だから、アーサー様の為よ。」
「嘘だ。アーサー、アーサーって…。本当はお前の親父のためだろ!?」
「…っっ!」
「…何だよ…。図星かよ…。」
「違うわ!!」
「そうやって親の言いつけ通りに生きるのかよ!?自分の意志じゃ何もできないのかよ!?」
「ちよっと!?口を慎みなさいっ!」
なんで怒っているのか、何が嫌でこんなにわめいているのか
熟れすぎた果実が弾けて中身が吹き出すように彼は必死にあがき始めた。
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もなか@中身はこしあん(プロフ) - 麗華さん» 学校はじまると何かと忙しいですからね(´-ω-`)麗華さんも暇なときでいいので見に来てくださいね~♪ (2015年9月7日 17時) (レス) id: 42910bbd46 (このIDを非表示/違反報告)
麗華 - もなか@中身はこしあんさん» いえいえです(*・ω・*)学校始まっちゃいましたもんね…やだなぁ(笑)第一章完結お疲れ様でした!番外編も第二章も楽しみにしてます♪ (2015年9月5日 23時) (レス) id: 525612bbb2 (このIDを非表示/違反報告)
もなか@中身はこしあん(プロフ) - 麗華さん» ありがとうございますっ!(っ´ω`c)更新ペースはこれから少し落ちると思いますが、よろしくお願いします。まだまだ序の口ですから、第二章ではもっとドロドロにしていきますよ~(`・ω・´) (2015年9月1日 7時) (レス) id: 42910bbd46 (このIDを非表示/違反報告)
麗華 - もなか@中身はこしあんさん» 「私が来てない間にかなりお話が進んでいる(;°Д°)」とビックリしました(笑)折角なので最初から読み返してみました♪途中で感動して泣いちゃいました…これからも更新楽しみにしてます^^波乱の第二章に突入だ!((黙r (2015年8月31日 16時) (レス) id: 525612bbb2 (このIDを非表示/違反報告)
もなか@中身はこしあん(プロフ) - しゅうさん» 素敵だなんてっ…そんなっ…(*゜д゜*)とっっても嬉しいです!!ありがとうございます! (2015年8月13日 2時) (レス) id: 42910bbd46 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もなか | 作成日時:2015年5月30日 19時