愛の言葉が苦く響く ページ42
その日の晩餐。Aはいつものように父と母とで豪華な料理を食べていた。しかし今日はAは食欲がないのかあまりフォークが進んでいないようだった。食事前にお菓子を食べていたわけでもないしどうしたんだろうとアドムは少し気にしていた。しかし、彼も声をかけることは出来なくて時間がすぎていった。
しばらくして彼女は少し緊張した声色で口を開いた。
「お父様、お母様、お話があります。」
その声に二人の動きは止まり、彼女に注目が集まる。どうした?と腹に響くような声で彼女の父が聞くと、彼女は少し気弱そうな、しかしはっきりとした声で言った。
「先日、アーサー様から……プロポーズをされました。」
その一言を聞いたAの母はまぁ!と口を手で押さえてうれしそうにほほえんだ。もちろん、Aの父もにんまりと満足そうに微笑んだ。アーサーの家は位も高く、金も、財力も、権力もあり、あの端整な顔立ち。Aの父の経営する企業とタッグを組めば、もっと富を得ることができる。Aの父は是非とも自分の娘と結婚させたいと考えていた。それは、Aもよく分かっていた。
「…で、A。お前はどう答えるつもりだ?」
「はい。私は……」
パリン!
Aが口を開いたと同時に乾いた音が部屋に響いた。それは、彼女のすぐ後ろで聞こえてきた。反射的に彼女は後ろを見る。
「申し訳ございませんっ!手が滑ってしまいました。」
「アドムさん。大丈夫ですか?」
「あ、すみません。」
そこには、割れたティーポットを集めるアドムの姿。他の召使いたちも急いでこぼれたお茶と破片を拾う。どうやら、アドムがティーポットを落としてしまったようだ。
「僕がします。危ないですから…。」
そういいながら彼は手袋をとって細かい破片を取る。
「A。で、どう答えるつもりだ?」
彼にすっかり気を逸らしてしまったため、しびれを切らした彼女の父が再び同じ質問をする。彼女ははっとし、自分の父の方に向き直る。
「あ、はい。お父様。私はこのプロポーズを……承諾するつもりです。」
「ふはははは。そうかそうか。」
Aの父は大きな腹を揺らして笑った。Aはそんな父に乾いた笑みを返した。母親も嬉しそうに肩を揺らした。
「痛っ!!」
「アドムさん!血が出てます!」
「大丈夫です。ちょっとぼんやりしてしまって…。」
そんな声が後ろの方で聞こえた気がした。
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もなか@中身はこしあん(プロフ) - 麗華さん» 学校はじまると何かと忙しいですからね(´-ω-`)麗華さんも暇なときでいいので見に来てくださいね~♪ (2015年9月7日 17時) (レス) id: 42910bbd46 (このIDを非表示/違反報告)
麗華 - もなか@中身はこしあんさん» いえいえです(*・ω・*)学校始まっちゃいましたもんね…やだなぁ(笑)第一章完結お疲れ様でした!番外編も第二章も楽しみにしてます♪ (2015年9月5日 23時) (レス) id: 525612bbb2 (このIDを非表示/違反報告)
もなか@中身はこしあん(プロフ) - 麗華さん» ありがとうございますっ!(っ´ω`c)更新ペースはこれから少し落ちると思いますが、よろしくお願いします。まだまだ序の口ですから、第二章ではもっとドロドロにしていきますよ~(`・ω・´) (2015年9月1日 7時) (レス) id: 42910bbd46 (このIDを非表示/違反報告)
麗華 - もなか@中身はこしあんさん» 「私が来てない間にかなりお話が進んでいる(;°Д°)」とビックリしました(笑)折角なので最初から読み返してみました♪途中で感動して泣いちゃいました…これからも更新楽しみにしてます^^波乱の第二章に突入だ!((黙r (2015年8月31日 16時) (レス) id: 525612bbb2 (このIDを非表示/違反報告)
もなか@中身はこしあん(プロフ) - しゅうさん» 素敵だなんてっ…そんなっ…(*゜д゜*)とっっても嬉しいです!!ありがとうございます! (2015年8月13日 2時) (レス) id: 42910bbd46 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もなか | 作成日時:2015年5月30日 19時