赤い花弁 ページ35
「あら、Aさん。ちょっとお太りになった?」
「うっ嘘よ。そんなはずはないわ。」
仕切の向こうでアドムは彼女たちの声を聞いていた、今は、ちょうど社交期に着るのドレスを新調するため、寸法を測っている。この店の人とは昔からの仲であるため、自然と周りの雰囲気も和やかになる。アドムの隣には洋服屋の女の人がクスクス笑いながら寸法を測っている彼女たちの会話を聞いて笑っていた。アドムはちょっとだけAを仕切越しにチクリとさした。
「最近、Aお嬢様はよくお食べになりますので…その影響かもしれませんね。」
「ちょっと!?アドム!」
フフフと周りにいた職人たちは笑い出し、和やかな雰囲気が部屋に包まれた。
「あら、Aちゃん。首に赤い痕がついてるわ?……なにかしら?」
それを聞いてアドムは一瞬で気づく。それは昨日の夜、自分がつけた印であると。そして、彼は静かに、艶やかに、ひとりでにやっと笑った。この問いに彼女がどう答えるか…。焦る彼女の顔が想像できた。
「え……あぁ…こっこれは…。昨日、虫に刺されたの。別に大したことないわ。」
その滅茶苦茶な答えをアドムは笑いをこらえるのに必死で聞いていた。あぁ、きっと屋敷に帰れば彼女に怒られるな。と思いながら。
それから、ドレスの色、デザインを決め、仮縫いをし待ち針で止め終わり後は縫うのみ。という時だった。部屋のドアが開き、独りの見習いらしき女が入ってきた。
「先生、たった今急ぎの仕事です。少し来ていただいても宜しいでしょうか?」
「あら、大変。Aちゃん。悪いけどすぐ戻ってくるから、ちょっとそのままでいてくれる?」
「はい。わかったわ。」
じゃあね。といって皆が部屋から出て行く。ガチャンと仕立て室の扉が閉まり、静寂がこの部屋を包んだとき、一匹の猛獣が動いた。
「お嬢様、入りますよ。」
「ふんっ。駄目っていっても入ってくるんでしょ?」
仕切から失礼します。といってAのいる方に入ってくるアドム。仮縫いしてあるAのドレスを見てアドムは少しだけ驚く。そこには紺色のドレスを着たAがいたから。
「…へぇ、紺色にしたんだ…。赤じゃなくていいの?」
「別に…赤色にしようと思ったけど似合わなかったの。」
つんつんしながらそっぽを向くA。アドムはすっと手を伸ばし、首元に手を当てた。アーサーの好みよりも自分の言った色を選んだAに少し優越感を味わった。
「虫に刺されたんですか?大丈夫ですか?」
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もなか@中身はこしあん(プロフ) - 麗華さん» 学校はじまると何かと忙しいですからね(´-ω-`)麗華さんも暇なときでいいので見に来てくださいね~♪ (2015年9月7日 17時) (レス) id: 42910bbd46 (このIDを非表示/違反報告)
麗華 - もなか@中身はこしあんさん» いえいえです(*・ω・*)学校始まっちゃいましたもんね…やだなぁ(笑)第一章完結お疲れ様でした!番外編も第二章も楽しみにしてます♪ (2015年9月5日 23時) (レス) id: 525612bbb2 (このIDを非表示/違反報告)
もなか@中身はこしあん(プロフ) - 麗華さん» ありがとうございますっ!(っ´ω`c)更新ペースはこれから少し落ちると思いますが、よろしくお願いします。まだまだ序の口ですから、第二章ではもっとドロドロにしていきますよ~(`・ω・´) (2015年9月1日 7時) (レス) id: 42910bbd46 (このIDを非表示/違反報告)
麗華 - もなか@中身はこしあんさん» 「私が来てない間にかなりお話が進んでいる(;°Д°)」とビックリしました(笑)折角なので最初から読み返してみました♪途中で感動して泣いちゃいました…これからも更新楽しみにしてます^^波乱の第二章に突入だ!((黙r (2015年8月31日 16時) (レス) id: 525612bbb2 (このIDを非表示/違反報告)
もなか@中身はこしあん(プロフ) - しゅうさん» 素敵だなんてっ…そんなっ…(*゜д゜*)とっっても嬉しいです!!ありがとうございます! (2015年8月13日 2時) (レス) id: 42910bbd46 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もなか | 作成日時:2015年5月30日 19時