美しく愚かな獣 ページ30
そこにはいつものアドムはいなかった。痛がるAに構いもせず、彼女のいたるところに噛みついた。所々に赤い華が咲いている。
アドムは変な不安に駆られていた。我慢していた欲が熟した実の中身が吹き出すように溢れ出て、今すぐ目の前にある快楽を求め、貪りたがっていた。
_______________今宵の彼に手加減はなかった。
「待って!アドム!私は許可なんか出してないわっ!」
「許可が何だって言うんだよ…」
たがが外れてしまったアドム。そんな彼をAは怒ることはしなかった。彼女は為されるがままに従った。
なんで自分がこんなにも獣のようになっているのかが分からないアドム。ただ、今は本能にだけ従い、細い彼女の背中を何度も何度も引き寄せた。彼女に独占欲という名のキスを繰り返し、独占欲という名の印をつけた。
彼の動きが止まったのは夜がふけこみ、静寂が大きな屋敷を包み込んだときだった。
「今日のアドムは何か変よ?」
アドムの腕の中でAは口を開いた。いつもよりも彼の腕の温もりが暖かく感じる。
「…別にそんなことはないけど…。痛かった?」
「当たり前でしょ!?」
キッと睨むAを彼は更に優しく抱き寄せた。
「…ごめん。……お嬢様。」
いつもよりも弱々しいアドムの声。その声にギョッとした、Aはちらっと彼の表情を伺う。
暗くてあまりよくは見えないが、それでも何か寂しそうな、悔しそうな、つらそうな…複雑な表情をしているのはわかった。
より不安になった、Aは再び彼に聞く。
「やっぱり何か変…。大丈夫?何かあったの?」
「何にもないって…。俺、自分の部屋に戻る。」
やっぱりおかしい…。とAは思った。いつも自分のペースを崩すところを見せない彼だが、今は…いや、最近は少し変わった気がする。今のように急によそよそしくなるときがある。急にAと距離をとろうとするときがあった。しかし、何が原因なのか彼女には分からなかった。
アドムはシャツを羽織り、燕尾服をきて、手袋をはめ、ろうそくを手に持ったときだった。Aはアドムのネクタイが少しだけ歪んでいるのに気がつき、自分の身体に布を巻き、立ち上がった。
「アドム。」
「何?」
「ネクタイが歪んでる。」
そうして彼の首に手を伸ばしたときだ。
彼はその伸ばされた手をさっとよけた。
不思議そうな顔をするA。
「……大丈夫。自分で出来るから…。」
そう言って彼はAの部屋を後にした。
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もなか@中身はこしあん(プロフ) - 麗華さん» 学校はじまると何かと忙しいですからね(´-ω-`)麗華さんも暇なときでいいので見に来てくださいね~♪ (2015年9月7日 17時) (レス) id: 42910bbd46 (このIDを非表示/違反報告)
麗華 - もなか@中身はこしあんさん» いえいえです(*・ω・*)学校始まっちゃいましたもんね…やだなぁ(笑)第一章完結お疲れ様でした!番外編も第二章も楽しみにしてます♪ (2015年9月5日 23時) (レス) id: 525612bbb2 (このIDを非表示/違反報告)
もなか@中身はこしあん(プロフ) - 麗華さん» ありがとうございますっ!(っ´ω`c)更新ペースはこれから少し落ちると思いますが、よろしくお願いします。まだまだ序の口ですから、第二章ではもっとドロドロにしていきますよ~(`・ω・´) (2015年9月1日 7時) (レス) id: 42910bbd46 (このIDを非表示/違反報告)
麗華 - もなか@中身はこしあんさん» 「私が来てない間にかなりお話が進んでいる(;°Д°)」とビックリしました(笑)折角なので最初から読み返してみました♪途中で感動して泣いちゃいました…これからも更新楽しみにしてます^^波乱の第二章に突入だ!((黙r (2015年8月31日 16時) (レス) id: 525612bbb2 (このIDを非表示/違反報告)
もなか@中身はこしあん(プロフ) - しゅうさん» 素敵だなんてっ…そんなっ…(*゜д゜*)とっっても嬉しいです!!ありがとうございます! (2015年8月13日 2時) (レス) id: 42910bbd46 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もなか | 作成日時:2015年5月30日 19時