いつもと違う朝 ページ26
朝、いつものようにアドムは一人、ワゴンを押して彼女の元へ向かうすれ違う召使い達に挨拶をしながらいつものように彼女のいるドアをノックし、入る。Aは既に起きていて、ベッドの上にちょこんと座っていた。
「今日はお早いですね。」
そんな言葉をはきながら、紅茶を入れる。爽やかな朝の顔をがいつものように部屋を包んだ。彼女はいつものように紅茶を口に運びながら、いつもとは違う言葉を言う。
「今日は、アーサー様がお目見えになるわ。」
「……アーサー?」
「…私の婚約者よ。」
婚約者……その言葉を聞いたアドムの眉がピクリと動く。そうなんですか……。と相槌を打ちながらチラッと横目で彼女の顔を見る。
婚約者が来るからといって浮かれているような顔でも、嬉しそうな顔でもなく、ただいつも通りに紅茶を飲むA。そんないつもの光景に少しだけ安堵する。
何故、安堵するのかよく自分でもわからない。そんな疑問を振り払うようにアドムは質問をする。
「どんな人?」
「知らないわ。今日、初めて会うもの。」
親に決められた相手だから。と彼女は付け足した。この時代の結婚は親が決めるもので子は口出しができなかった。口を出したとしても何の力もないだろう。
「変な奴だったらどうする?」
アドムは少しだけ鼻で笑いながら言った。からかっているつもりだったが、彼女は静かに諭すように言った。
「…仕方ないわね。それも定め…。」
朝日が部屋に差し込んで彼女の顔を照らす。その横顔はいつもよりも大人びて見えた。
それが、彼にとってはなんでかはわからないが、嫌だった。
「まぁ、お嬢様みたいな我儘と結婚するやつの方が気の毒だな。」
「…失礼ね。」
フンッとそっぽを向いたA。いつも通りの反応をする彼女の元へ歩み寄り、自分の方へその顔を向けさせる。そして、アドムは細い指で彼女の頰、唇、首をなぞった。
「俺は、この単調な関係さえ続けばお嬢様がどうなろうと関係ないけどな。」
「…そうね。」
彼女の綺麗な唇にそっとキスをする。唇を離し、怪しく笑うアドムは静かにワゴンを引いて部屋を後にした。いつもの日々が、いつも出なくなるほんの数日前のことだった。
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もなか@中身はこしあん(プロフ) - 麗華さん» 学校はじまると何かと忙しいですからね(´-ω-`)麗華さんも暇なときでいいので見に来てくださいね~♪ (2015年9月7日 17時) (レス) id: 42910bbd46 (このIDを非表示/違反報告)
麗華 - もなか@中身はこしあんさん» いえいえです(*・ω・*)学校始まっちゃいましたもんね…やだなぁ(笑)第一章完結お疲れ様でした!番外編も第二章も楽しみにしてます♪ (2015年9月5日 23時) (レス) id: 525612bbb2 (このIDを非表示/違反報告)
もなか@中身はこしあん(プロフ) - 麗華さん» ありがとうございますっ!(っ´ω`c)更新ペースはこれから少し落ちると思いますが、よろしくお願いします。まだまだ序の口ですから、第二章ではもっとドロドロにしていきますよ~(`・ω・´) (2015年9月1日 7時) (レス) id: 42910bbd46 (このIDを非表示/違反報告)
麗華 - もなか@中身はこしあんさん» 「私が来てない間にかなりお話が進んでいる(;°Д°)」とビックリしました(笑)折角なので最初から読み返してみました♪途中で感動して泣いちゃいました…これからも更新楽しみにしてます^^波乱の第二章に突入だ!((黙r (2015年8月31日 16時) (レス) id: 525612bbb2 (このIDを非表示/違反報告)
もなか@中身はこしあん(プロフ) - しゅうさん» 素敵だなんてっ…そんなっ…(*゜д゜*)とっっても嬉しいです!!ありがとうございます! (2015年8月13日 2時) (レス) id: 42910bbd46 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もなか | 作成日時:2015年5月30日 19時