滴る愛は床にこぼれて…【名前変換オリジナル】

再会の連鎖 ページ18

そんなセリフをそこらへんの男が言ったら、きっと女性たちは鳥肌を立てて断るだろう。しかし、彼がそんな甘いセリフを吐いたらどんな女でも首を縦に振らずにはいられないだろう。それくらい、甘美で妖艶な容姿と振る舞い。アドムは、彼女の太ももを優しく撫でる。話しながら二人とも酒を飲んでいたため、随分と酔いは回ってきているはずだ。あまり思考が回らない分落としやすい。

彼女はその彼の囁きを最後に俯いて何も発さなくなった。これは落ちた。と思った彼は最後の仕上げにかかる。あとは、この女がイエスと言いさえすれば今夜はいい夜になるだろう。再び耳元で囁く。

「………………だめ？」

さぁ、早くイエスと答えろ。もし答えたら、今まで味わったことのないような快楽に溺れさせてやるから…さぁ、早く。

アドムは彼女の手を撫で、彼女の顔を覗き込もうとした。

すると、その女性はいきなりクスクスと笑いだし口を開く。

「昔よりも口説くのが下手になったんじゃない？下心が丸見えよ。」

その女性は悪戯っぽく微笑み、自分の前髪を豪快に書き上げ、手に持っていたお酒を一気に飲む。

アドムは自分の顔が引きつっていくのがわかった。その女性から身体をはなす、興奮していた思考回路を一旦停止し、今の状況を考える。昔……？ってことは前にもあったってことか？今までの人生で会ってきた色んな女の顔をおもいうかべるが、思い当たらない。

焦ったような表情の彼にその女性はクスクスと笑った。

「ふふっ……。色んな女性を抱きすぎて分からないんでしょう？相変わらずねアドム。四年ぶりね。メイドのマリーよ。」

マリー……。四年前……。

「……っ！！」

ここまで来てようやく思い出す。あれは確か、4軒目の屋敷に使えていた時、そこの令嬢とこのマリーと二股の関係をしていた。あぁ、最悪だ。と彼は思った。よりによって昔関係を持った奴に出くわすとは思わなかった。

「最悪だ……。」

「最悪で悪かったわね。ふふ、一回関係を絶った相手とは二度とそういう関係を持たないのがポリシーじゃなかったの？」

その言葉にチッと舌打ちをして、グラスに入った酒を煽る。小馬鹿にしたような言い方で彼女は楽しそうに余裕の笑みを浮かべている。

いくら自分が享楽主義でも、一度切った相手とはもう関係は持たないのが彼のポリシーだ。

何かのツタ植物のように嫌に絡みつく関係が大嫌いだった。今日の狩りは失敗だ。このマリー以上のいい女はもうこのパブにはいない。

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