不純なキス ページ12
「嫌味しか言えないのね。早く仕事に戻って頂戴。」
そう言うと、Aはフンッと不機嫌そうに鼻を鳴らし、窓の外を見た。アドムはメイドに自分の仕事を押し付けてしまったことを思い出し、早く戻らなければと渋々踵を返す。が、すぐに戻ってきて、そっぽを向いているAの顎をくいっと自分の方に向け、自分の唇を押し付ける。我儘な令嬢を黙らせることができたんだ。これぐらいの褒美はいただいてもいいだろう?そう彼は思っていた。
「では、失礼します。お嬢様。」
そう言って不機嫌な彼女が入る部屋を後にした。もう一度言う。
二人の間に恋愛的感情は皆無だ。
ただ、気持ちよければそれでいい。そんな希薄な契りによって成り立つ関係である。
夜、屋敷に使える長い長い1日が終わり、アドムは使用人たちが過ごす屋敷の地下の個室の一角でベッドの上に横たわり大きく伸びをした。昨夜のお嬢様のふかふかのベッドとは違って、固くて居心地が悪い。まぁ、自分の家のベッドよりは随分とマシだ。そう思いながら、大きく息を吐く。
この屋敷に来てから2年が経つが、こんなに欲求が溜まるのは我慢ならない。自分自身でその欲を吐き出そうと思えば出来るが、そんなみっともない真似はごめんだ。彼にも彼なりのプライドというものがあった。
粗末な造りの天井を眺めながら、彼は時折自分の過去を振り返る。何時からこんなに俺は汚い人間になったのか……と。
始まりは14の時だった。
そこで使えていて間もない頃、その屋敷の20半ばだった令嬢に夜中に自分の部屋に来て欲しいと頼まれた。毎日生きるためのお金を稼ぐのに必死だった彼はその命令通り行った。それが彼の“初めて”だった。
令嬢は前々から彼のことを狙っていたらしく、ずっと機会を待っていたらしい。突然のことに彼は動揺するもその快楽に溺れていった。最初はその令嬢の言いなりだったアドムだったが、回数を重ねるごとに立場が逆転していった。
しかし、そんな日々も長くは続かずそこの家の者にばれ、追い出される羽目になった。彼はその時、初めてその行為がイケナイ事だと知った。すると、その反動でもっと、もっとと求めるようになっていった。
そして、五年が経った今でも甘い蜜を吸い続けている。
「ほんと……最低だ。」
だからと言ってどうしようとも思わない。そして、今日の朝、お嬢様に言われたことを思い出しながら目を閉じた。
47人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
もなか@中身はこしあん(プロフ) - 麗華さん» 学校はじまると何かと忙しいですからね(´-ω-`)麗華さんも暇なときでいいので見に来てくださいね~♪ (2015年9月7日 17時) (レス) id: 42910bbd46 (このIDを非表示/違反報告)
麗華 - もなか@中身はこしあんさん» いえいえです(*・ω・*)学校始まっちゃいましたもんね…やだなぁ(笑)第一章完結お疲れ様でした!番外編も第二章も楽しみにしてます♪ (2015年9月5日 23時) (レス) id: 525612bbb2 (このIDを非表示/違反報告)
もなか@中身はこしあん(プロフ) - 麗華さん» ありがとうございますっ!(っ´ω`c)更新ペースはこれから少し落ちると思いますが、よろしくお願いします。まだまだ序の口ですから、第二章ではもっとドロドロにしていきますよ~(`・ω・´) (2015年9月1日 7時) (レス) id: 42910bbd46 (このIDを非表示/違反報告)
麗華 - もなか@中身はこしあんさん» 「私が来てない間にかなりお話が進んでいる(;°Д°)」とビックリしました(笑)折角なので最初から読み返してみました♪途中で感動して泣いちゃいました…これからも更新楽しみにしてます^^波乱の第二章に突入だ!((黙r (2015年8月31日 16時) (レス) id: 525612bbb2 (このIDを非表示/違反報告)
もなか@中身はこしあん(プロフ) - しゅうさん» 素敵だなんてっ…そんなっ…(*゜д゜*)とっっても嬉しいです!!ありがとうございます! (2015年8月13日 2時) (レス) id: 42910bbd46 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:もなか | 作成日時:2015年5月30日 19時