持ち場は別で… ページ10
「今日、魔法を学ぶ旅に出ていたAが帰ってきた。今日から再びここで働くことになった。そして、其の横に立っているのが彼女の“知り合い”の紫苑だ。」
「知り合いじゃねーし。彼氏だし。」
「彼氏ではないから。」
ボソッと呟く紫苑にAは、再びカツを入れる。
三人の周りを取り囲む湯女達は、紫苑を見てにやにやと嬉しそうに笑った。それもそうだ。紫苑はハクに劣らず結構な美形だ。本人はあまり意識してはないだろうがすっと通った鼻筋に、綺麗な黒髪はやはり此処の湯女達を虜にした。
そんななか、Aの耳に聞き覚えのある声が聞こえた。
「A!?Aなのか!?」
周りの湯女や兄役達を蹴散らしてその輪の中から出てきたのは、六年前に比べて大人の色気が増したリンだった。
「リン!」
「ったくよー!お前、俺がどんなに心配したと思ってんだよ!俺もハク様もずっとお前の帰り待ってたんだからな。」
リンは、そう言いながら彼女に抱きつく。彼女もリンとの再会に嬉しそうだ。
帰ってきてよかった。
彼女は再びそう思った。周りの人たちも「おかえりー。」やぱちぱちと拍手も聞こえてくる。皆がどんな反応を示すのか少し不安に思っていた彼女だったが、その反応にもホッと安心する。
「話は以上だ。皆早く持ち場に着け!…紫苑に仕事の仕方を教えてくれ。…Aはこっち。」
近くにいた兄役に紫苑の世話係を頼み、Aの手を引いて歩いていこうとするハクに紫苑は眉を寄せた。そして、不機嫌そうに再び彼女をハクから引き剥がした。
「あ?なんで俺とAは別なんだよ?」
「其方とAの仕事の持ち場が違う。Aは私と一緒の持ち場なんだ。当たり前だろう?」
「はぁ!?なんでお前と一緒にコイツが仕事すんだよ。」
「お前ではない。私は其方の上司だ。ハク様と呼べ。それに、Aは昔から私と同じ仕事をしていた。彼女はこっちの仕事の方が合っている。」
ハクの顔にもイライラが現れ始める。もう仕事を始めなければならない時間はとっくに過ぎている。順調に全体の仕事が進んでいなければ、湯婆婆に喝を入れられるのはハクの役目だ。
「じゃぁ、ハク様。俺もAと同じ持ち場にしてくださーい。」
「無理だ。」
「…は?なんで。」
「其方には帳場の仕事が出来るとは思えない。…貴様には風呂洗いがお似合いだ。A、行こう。」
嫌みたっぷりな笑みを紫苑に返したハクは、再びAの手を取って歩き出した。
219人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
レモン(プロフ) - はじめまして、ハクも格好いいけど紫苑の方が可哀相に思えて、紫苑が好きになってきました。これからも応援してます! (2019年1月20日 22時) (レス) id: e66d7d83c8 (このIDを非表示/違反報告)
しろ - ほほぅ…誤って評価を…ならあなたのかわりに私がいれないでおきます((ニコッ あ!ごめんなさい。誤作動でおしちゃいました★ (2018年12月15日 21時) (レス) id: 7e3c093cf9 (このIDを非表示/違反報告)
名無し43692号(プロフ) - 作者様から返事が、、!ありがとうございます(^O^) 紫苑君の活躍期待してます!笑 ずっと応援してます(^-^)/ (2016年3月26日 19時) (レス) id: 9d06ba8ba1 (このIDを非表示/違反報告)
もなか@中身はこしあん(プロフ) - 季紀さん» 季紀さん!?君の手シリーズ読んでました!(`・д・´)売ってる本みたいだなんて…そんなそんな…!ありがとうございます!これからも頑張らせていただきます! (2016年3月26日 18時) (レス) id: 143efacaa5 (このIDを非表示/違反報告)
もなか@中身はこしあん(プロフ) - 名無し43692号さん» ありがとうございます!紫苑君、これから結構活躍するはずです!見届けてあげて下さい!よろしくお願いします!(´▽`)ノ (2016年3月26日 18時) (レス) id: 143efacaa5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:もなか | 作成日時:2015年11月19日 1時