ハクの記憶 ページ6
「……A!!」
私は彼女の名を呼んだ。それと同時に駆け寄り彼女の手を取った。“嬉しい”という言葉では足りないくらいの感情が私の中にどっと溢れた。
六年前、私は千尋を元の世界へ送った後、少しの緊張と恐怖心を持って油屋に帰った。何故なら、湯婆婆と千尋を人間界へ帰すかわりに八つ裂きにされるという契約を結んだからだ。
色々な、今までに感じなかったような想いが次から次へと走馬燈のように駆け巡っていた。
Aになんて言えばいいのだろうか?
千尋が来てからそのことで忙しくてAと関わる機会がなく、契約のこともきっと彼女は知らない。
しかし、油屋に戻ると拍子抜けするような湯婆婆の言葉が私を待っていた。
「あの時の契約は取り消しにする。」
「なっ……どっどうして…?!」
「人手が足りなくなっちまった。全く、Aといいお前といい…なんでこんな勝手な奴ばかりなんだい…ここは。」
大きな鼻をフンッ!と不機嫌そうにならす湯婆婆から漏れたAの名前。そう言えば、ここに来るまでの間にリン達がAが見あたらないと探していた。
変な胸騒ぎがする。
「Aに…何かあったのですか?」
その質問に湯婆婆は怪訝そうな顔をする。
「聞いてないのかい?急に旅に出るって言いだしたんだよ。帰ってこなかったらすすにでもして消してやるさ。」
そう言ってニヤニヤ気味悪く笑いながら契約書をひらつかせた。確かにそこには彼女の字で、彼女の名前が記されていた。
「それで、今Aはどこに?何時帰ってくるのですか?」
少しパニックになりながら私は湯婆婆にとう。
しかし、受け取った言葉は知らない。の一言だった。
私は、彼女の部屋へ走った。勢いよくドアを開ける。しかし、そこには「もう!ハク!ノックぐらいして!」といつものように怒る彼女は居なかった。
机の上のぬいぐるみや花は何時もと変わらなくそこにあった。しかし、よく見てみると彼女がよく読んでいた魔法に関する本や積んである着物が綺麗になくなっていた。それが彼女が居なくなってしまったことを告げていた。
何時も私の隣に居て、居るのが当然で、今も、これからもずっと居ると思っていた彼女が、いつも笑顔で寂しがり屋で、強がりな彼女が、大切な存在が消えた。
その日から私の頭の中はAの事でいっぱいだった。
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レモン(プロフ) - はじめまして、ハクも格好いいけど紫苑の方が可哀相に思えて、紫苑が好きになってきました。これからも応援してます! (2019年1月20日 22時) (レス) id: e66d7d83c8 (このIDを非表示/違反報告)
しろ - ほほぅ…誤って評価を…ならあなたのかわりに私がいれないでおきます((ニコッ あ!ごめんなさい。誤作動でおしちゃいました★ (2018年12月15日 21時) (レス) id: 7e3c093cf9 (このIDを非表示/違反報告)
名無し43692号(プロフ) - 作者様から返事が、、!ありがとうございます(^O^) 紫苑君の活躍期待してます!笑 ずっと応援してます(^-^)/ (2016年3月26日 19時) (レス) id: 9d06ba8ba1 (このIDを非表示/違反報告)
もなか@中身はこしあん(プロフ) - 季紀さん» 季紀さん!?君の手シリーズ読んでました!(`・д・´)売ってる本みたいだなんて…そんなそんな…!ありがとうございます!これからも頑張らせていただきます! (2016年3月26日 18時) (レス) id: 143efacaa5 (このIDを非表示/違反報告)
もなか@中身はこしあん(プロフ) - 名無し43692号さん» ありがとうございます!紫苑君、これから結構活躍するはずです!見届けてあげて下さい!よろしくお願いします!(´▽`)ノ (2016年3月26日 18時) (レス) id: 143efacaa5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もなか | 作成日時:2015年11月19日 1時