締め付ける想い ページ48
賑やかだった湯屋に静寂が訪れる。客も、湯女も皆が眠りに入ろうとしている頃。
コンコンコン
私の部屋の戸をノックする音が聞こえてきた。恐らくAだろう。仕事が終ったら一緒に羊羹を食べようと約束していた。
ドアを開けると共に私は少しだけドキッとする。
濡れた黒くて綺麗な髪、少し赤みを帯びた頬、いつもより薄い生地の着物を身にまとったAが立っていた。きっと湯浴みをした後なのだろう、石鹸の匂いが鼻をかすめる。
どうやら私はAの艶っぽさを身に纏ったこの〝今〟にまだ少し慣れていないようだ。
「ハク？どうしたの？」
「ん？あ、いや、何でもないよ。お入り。」
「んーっ！美味しいっ！」
私は思わず口に出して言った。口の中でとろける餡子の甘さが疲れた体を癒してくれる。ハクは、そんな私の姿を見てか、クスクスと笑った。
「其方のその羊羹を頬張る顔は、今も昔も変わらないな…。」
「そ、そうかな？」
目を細めるハクに少しの気恥ずかしさを感じながら、私は再び羊羹を頬張った。
うん、緑茶と羊羹の相性もバッチリだ。
「A。」
しばらくして、ハクが私に呼びかけた。
「ん？どうしたの？ハク。」
「其方に聞きたいことがあるんだけど、聞いてもいい？」
「うん。」
私は、少し温くなってしまったお茶を啜りながら言う。
一方のハクは悪戯っぽい光を瞳に宿しながら言った。
「先ほど、リンが言っていたあの話。…私も詳しく聞きたいな。」
「んっ！？」
飲んでいたお茶をむせ返りそうになりながら、ゴクッと喉を鳴らして飲み込む。
突然の事に私は動揺を隠せない。
「え…えと、何のこと…かな？」
「知らばくれても駄目だぞ、A。ちゃんと私の耳にも聞こえていた。」
ハクは少しだけ、私との距離を詰める。翡翠色の瞳が私を捕らえて離さない。
「で、でも…。」
「私も其方に話したんだ、其方も私に話してくれたっていいだろう？」
「これだけは絶対に言えないよ、ハク…。」
「どうして？」
ハクが私の手を握る。ドクンと心臓が、心が、身体がビックリする。
「どっどうしても！」
すると、ハクは不満そうに眉間にしわを寄せた。
「紫苑には教えて、私には教えてくれないのか？」
「どうしてそこまでして聞こうとするの？」
だって、ハクは千尋が好きなんでしょ？だから、私の好きだった人なんてどうでもいいじゃない。
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レモン(プロフ) - はじめまして、ハクも格好いいけど紫苑の方が可哀相に思えて、紫苑が好きになってきました。これからも応援してます！ (2019年1月20日 22時) (
レス) id: e66d7d83c8 (このIDを非表示/違反報告)
しろ - ほほぅ…誤って評価を…ならあなたのかわりに私がいれないでおきます((ﾆｺｯ あ！ごめんなさい。誤作動でおしちゃいました★ (2018年12月15日 21時) (レス) id: 7e3c093cf9 (このIDを非表示/違反報告)
名無し43692号(プロフ) - 作者様から返事が、、！ありがとうございます(^O^) 紫苑君の活躍期待してます！笑 ずっと応援してます(^-^)/ (2016年3月26日 19時) (レス) id: 9d06ba8ba1 (このIDを非表示/違反報告)
もなか@中身はこしあん(プロフ) - 季紀さん» 季紀さん！？君の手シリーズ読んでました！(｀・д・´)売ってる本みたいだなんて…そんなそんな…！ありがとうございます！これからも頑張らせていただきます！ (2016年3月26日 18時) (レス) id: 143efacaa5 (このIDを非表示/違反報告)
もなか@中身はこしあん(プロフ) - 名無し43692号さん» ありがとうございます！紫苑君、これから結構活躍するはずです！見届けてあげて下さい！よろしくお願いします！(´▽`)ノ (2016年3月26日 18時) (レス) id: 143efacaa5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もなか | 作成日時：2015年11月19日 1時
