噂 ページ47
「なぁ!おい、A!好きな人いるってほんとうか!?」
帳場に着くなり、リンがものすごい勢いで私に飛び込んでくる。そのせいで危うく筆を落としそうになってしまう。しかし、それよりも話の内容の方が驚きが大きい。
「え!?え!?何、急に…!」
「だーかーらー、Aの好きな人教えろって!」
「な、何でそんなこと知ってるの!?」
私はちらりとハクの方を見る。一瞬だけ目があったが、すぐに逸らしてしまった。
「紫苑が言ってたんだよ!な、いいだろ?俺とお前の仲ってことで!な?な?」
あまりに騒がしくしすぎたのか、兄役たちがチラチラとこちらを見る。恥ずかしすぎて顔に熱が上がる。それをリンは茶化すように言った。
「あっははっ!顔真っ赤だなぁ!あんなに小さかったAも年頃だもんな!」
「変なこと言わないでよ、リン。」
「リン、いい加減にしないか?Aが困ってる。」
「えー!でもいいじゃねぇか!ハク様だって知りてぇと思うだろ?Aの好きな人!」
「そ、それは…。」
何故か言葉を濁すハク。私は、声を荒らげてリンに言う。
「ちょっと!リン!ハクも困ってるから…!」
「焦りすぎだろ!でもハク様って……いや、なんでもねぇ!んじゃぁな!A、今度話聞かせろよ!早く行かねぇと怒られるから!」
そう言葉を残し、走り去っていくリン。もうハクへの想いは忘れた。
もう終わったことだから…。
「A。」
だってハクは千尋の事が好きなんだから…。
「A…?」
諦めるんだ。
「ひゃぁっ!な、何!?」
我に返るとハクが心配そうな目で私を見ていた。
「A、最近疲れているみたいだね…。これ、差し入れに貰ったんだ。仕事が終ったら二人で食べよう。ね?」
そう言いながらハクは紙にくるまれた羊羹を見せて微笑んでくれた。
彼のその微笑みが何度私を惑わてるか、きっとハクは分かってないんでしょ?
「うん、そうだね。」
「Aの好きな人かぁ…。」
俺、リンは雑巾を片手にその事について考え込んでいた。
紫苑じゃないすると一体誰だ?
ハクが気になるような目で俺達の会話を眺めていた事を思い出し、ニヤニヤと笑う。
Aが帰ってきてから覇気が出てきたハク。あいつは堅物そうに見えて分かりやすい。まぁ、ハクが自分の気持ちに気づいてんのか分かんねぇけど…。
「リン、何ニヤついてんだ?気持ちわりぃぞ!」
「うるせぇ!」
リンは、たすきを縛り雑巾がけを始めたのだった。
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レモン(プロフ) - はじめまして、ハクも格好いいけど紫苑の方が可哀相に思えて、紫苑が好きになってきました。これからも応援してます! (2019年1月20日 22時) (レス) id: e66d7d83c8 (このIDを非表示/違反報告)
しろ - ほほぅ…誤って評価を…ならあなたのかわりに私がいれないでおきます((ニコッ あ!ごめんなさい。誤作動でおしちゃいました★ (2018年12月15日 21時) (レス) id: 7e3c093cf9 (このIDを非表示/違反報告)
名無し43692号(プロフ) - 作者様から返事が、、!ありがとうございます(^O^) 紫苑君の活躍期待してます!笑 ずっと応援してます(^-^)/ (2016年3月26日 19時) (レス) id: 9d06ba8ba1 (このIDを非表示/違反報告)
もなか@中身はこしあん(プロフ) - 季紀さん» 季紀さん!?君の手シリーズ読んでました!(`・д・´)売ってる本みたいだなんて…そんなそんな…!ありがとうございます!これからも頑張らせていただきます! (2016年3月26日 18時) (レス) id: 143efacaa5 (このIDを非表示/違反報告)
もなか@中身はこしあん(プロフ) - 名無し43692号さん» ありがとうございます!紫苑君、これから結構活躍するはずです!見届けてあげて下さい!よろしくお願いします!(´▽`)ノ (2016年3月26日 18時) (レス) id: 143efacaa5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もなか | 作成日時:2015年11月19日 1時