お饅頭 ページ45
それから数日後のことだ。
仕事の休憩時間なのだろう。リンと千尋はお茶を飲み寛いでいた。手にはお饅頭をもって。
「あん時にあのカエル頭がさー!」
とリンが仕事中の愚痴を漏らしながらお饅頭を食べようとした時だ。
するりとお饅頭が手から抜け、宙をまいはじめる。
「あ!おい、何なんだよ!」
宙に舞うお饅頭を必死に捕まえよとするが、ひらり、ひらりと避け、最終的にとある人物の掌に辿り着いた。
千尋が先に口を開く。
「あ、紫苑さん!お疲れ様です。」
「あ!お前!返せよ、俺のお饅頭!」
「おっす、お疲れ様〜…美味っ!」
「あーっ!俺のお饅頭がっ!!!」
お饅頭を食べられ、落胆するリンをよそに紫苑はお茶をぐいっと飲み、そのまま千尋とリンの輪の中に入る。
「今日はAちゃんの所には行かないんですか?」
「ん?あぁ…まぁな。なんかあいつこのごろ変だし…。」
「変?」
「なんか…俺に妙に優しいっつーか、なんつーか…」
リンが鬱陶しそうに口を開く。
「なんだよ、惚気けるなら他のとこいけよな!」
「ちげーよ、そんなんじゃねーよ…。」
んーっ!と悩ましげな表情で頭を掻く紫苑に千尋が少し遠慮がちに言った。
「あの…、紫苑さんとAちゃんって付き合ってるんですか?」
「え?…ははっ!付き合ってなんかねーよ…俺の一方通行な恋にあいつを付き合わせてるだけ。…だいたいあいつは…はぁ…。」
嘲笑気味な笑いを浮かべながら、紫苑はため息をついた。周りでは兄役や湯女達の笑い声が絶えず聞こえてくるというのに、その空間だけ少しだけ重い空気が流れる。
「あの、2人ってどうやって出会ったんですか?」
遠慮がちにしかし興味津々に千尋は尋ねる。紫苑はふっと笑った。
「なに?千尋ちゃん、そんなに気になるの?積極的だなぁ。」
「いえ、そんなつもりは…。」
一方のリンもお饅頭のことを引きずり膨れっ面ではいるが、どうやらその内容についてはとても気になるようだ。
紫苑は少しの意地悪そうににやりと笑う。
「いいぜ、教えてやるよ。俺とあいつ(A)の事を。」
話は、十数年前に遡る。
俺、紫苑はとある小さな村に生まれた。
小さい頃から魔法が使えていた俺は、どうやらその村からは異端とされていたらしい。
もちろん、仲間はずれや暴力もあった。家族ですら、俺と距離を置いた。
幼少期の俺は堪えられなくて、逃げる様に家を、村を飛び出した。
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レモン(プロフ) - はじめまして、ハクも格好いいけど紫苑の方が可哀相に思えて、紫苑が好きになってきました。これからも応援してます! (2019年1月20日 22時) (レス) id: e66d7d83c8 (このIDを非表示/違反報告)
しろ - ほほぅ…誤って評価を…ならあなたのかわりに私がいれないでおきます((ニコッ あ!ごめんなさい。誤作動でおしちゃいました★ (2018年12月15日 21時) (レス) id: 7e3c093cf9 (このIDを非表示/違反報告)
名無し43692号(プロフ) - 作者様から返事が、、!ありがとうございます(^O^) 紫苑君の活躍期待してます!笑 ずっと応援してます(^-^)/ (2016年3月26日 19時) (レス) id: 9d06ba8ba1 (このIDを非表示/違反報告)
もなか@中身はこしあん(プロフ) - 季紀さん» 季紀さん!?君の手シリーズ読んでました!(`・д・´)売ってる本みたいだなんて…そんなそんな…!ありがとうございます!これからも頑張らせていただきます! (2016年3月26日 18時) (レス) id: 143efacaa5 (このIDを非表示/違反報告)
もなか@中身はこしあん(プロフ) - 名無し43692号さん» ありがとうございます!紫苑君、これから結構活躍するはずです!見届けてあげて下さい!よろしくお願いします!(´▽`)ノ (2016年3月26日 18時) (レス) id: 143efacaa5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もなか | 作成日時:2015年11月19日 1時